.*宝小様から☆ヤス生誕記念&SELFCONTROL完結記念*.
10月3日はSpecialDay 【1】


 10月3日。今日は僕の友人、ヤスくんこと安田昴くんの誕生日。

 そんなわけで、学校が終わったあと、共通の友人である慎一くん・広夢くんと待ち合わせて、ヤスくんのアルバイト先に遊びに行った。


「ヤスくん、お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

 僕が差し出したプレゼントを受け取り、ヤスくんは穏やかな笑みを浮かべた。

「それね、俺と慎一と豹雅くんの3人から。ちなみに選んだのは俺。気に入ってくれるといいんだけど」

 得意そうな広夢くんの言葉にヤスくんは頷き、「2人もありがとう。何だか悪かったね、わざわざ来てもらっちゃって」と言った。

「それ言うなら、僕らの方こそバイト先に押し掛けちゃってごめんね」

「それは大丈夫。他のスタッフも今日が俺の誕生日だって知ってるから。今、ケーキ持ってくるから、ちょっと待ってて」

 ヤスくんはプレゼントを手に、店の奥へ消えていった。

 ヤスくんがアルバイトをしているこのカフェでは、スタッフの誕生日にお客様にケーキが無料で振る舞われる。

 だから僕らも迷惑承知でこうして押し掛けちゃったわけなんだけども。

「いやあ、やっぱヤスくんてカッコいいね〜。顔いいし、背高いし、足長いし、物腰穏やかだし」

 ヤスくんの消えた方を見つめながら、広夢くんが感嘆とも羨みともとれる声をあげた。

「ギャルソン姿がまたよく似合ってるし――女の子のからキャーキャー言われてるんだろうなあ」

「俺たちとヤスくんじゃもともとの作りが違うんだから仕方ないよ」

 静かに紅茶を飲んでいた慎一くんがそっけなく言い放つ。

「いいなあー。俺もカフェでバイトしようかなあ。そうすればもうちょいモテるんじゃないかな」

「広夢じゃヤスくんの引き立て役にしかならないよ。惨めだからやめておきな」

「……慎ちゃーん、自己紹介して機嫌悪いからって俺にあたるのやめてくれる?」

 広夢くんの抗議にも、慎一くんはどこ吹く風。知らん顔で紅茶をすすっている。

「慎一くん、広夢くんも、なんか、ごめんね」

「別に豹雅くんが謝る必要ないけど」

 言葉とは裏腹に慎一くんの言い方は冷たい。

「うん、でも」

 自分の名前にコンプレックスがある慎一くんに、自己紹介をさせるはめになったのは、僕に原因があるわけだから。

「森慎一、いい名前じゃん。何がそんなに嫌なの?」

 悪気はないけど空気の読めない我が弟・いっちゃんの発言に、慎一くんの眉がぴくりと動いた。

「ごめんね、慎一くん! うちの弟、思ったこと考えなしにすぐ口にしちゃう癖があって、少しは空気読めって、僕もいつも注意してるんだけど……」

「いいよ、別に」

カップを乱暴に置き、ポットの中に残っていた紅茶をどぼどぼと注ぐ。慎一くん、やっぱり怒ってる。

 こんなことになるなら、いっちゃんなんか連れてこなけりゃよかったな。いっちゃんが、ヤスくんのバイト先に遊びに行きたいって言うから一緒に来たのに……事前に慎一くんの名前について触れてはいけないよと言い聞かせなかった僕も悪いんだけど。

「慎一、今日はヤスくんの誕生日だからって集まったんだよ? なのに慎一だけそんな不機嫌そうにしてたら、ヤスくんに失礼でしょ」

「広夢に言われなくてもわかってる」

 たしなめる広夢くんに対し、慎一くんは面白くなさそうだ。いつもなら、おバカな発言をする広夢くんを、慎一くんが冷たくあしらうのにね。

「ならいいけど。ところで、伊吹くん、」

 広夢くんがニコニコ笑いながら、身を乗り出す。

「豹雅くんにも聞いたことあるんだけどさ、伊吹くんのお姉さんて、やっぱ可愛いの?」

 またその話か。僕は思わず苦笑い。

 いっちゃんはストローをくわえたまま宙を睨む。

「んー――上の姉ちゃんは可愛いと思うよ。豹くんに似てるし、リスとかウサギとかの小動物っぽい」

 広夢くんはまじまじと僕を見る。そんなじっと見つめられると、なんか気まずいんだけどな。

「下のはー――見た目綺麗系ギャルだけど、ちょー性格悪い。まさに性格ブス。例えるなら気性の荒いメスゴリラって感じ」

「「メスゴリラ?」」

 これには興味なさそうにしていた慎一くんも、怪訝そうに眉をひそめている。

 自分の姉をゴリラ呼ばわりするのはどうかと思うけど、あながち間違ってないんだよね、これが。

「お待たせしました」

 ヤスくんと、アルバイトらしき女の子がケーキのお皿を持って僕らの席にやってきた。

 とにかく食べることが大好きないっちゃんは、テーブルに並べられた5種のケーキに目を輝かせている。

「うちのカフェで人気のケーキトップ5を持ってきたよ。どれも美味しいからね」

 慎一くん、いっちゃんがテーブルの上のケーキを真剣に吟味している一方で、広夢くんは立ち去ったアルバイトの女の子の後ろ姿を目で追っている。僕はちゃんと顔を見なかったけど、広夢くん好みの可愛い子だったのかな?

「豹雅くんもケーキ選びな。広夢もいつまでも女の子見てないで」

 慎一くんに指摘され、広夢くんは決まり悪そうな顔をした。


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