.*小仁沢様から相互記念*.
Who is he?...【2】

 何だかよくわからないけど、洋ちゃんがあんなに慌てていたんだから、何かあったんだろう。

 駅までの道のりを走りながら、あたしは涼ちゃんに電話し、急な用事で部活に遅れる旨を伝えた。

 「急な用事って何だよ」と涼ちゃんは訝しげな調子で訊ねてきたけど、そこは適当に誤魔化す。

 文句があるなら後で洋ちゃんに言ってください。

「一舞、こっち!」

 駅前のコンビニの前で、洋ちゃんが待っていた。

「おまたせ」

 「で、どうしたの?」と聞く間もなく、洋ちゃんはあたしの手をむんずと掴み、歩きだす。

「何!? 何処行くの!?」

「一舞に見てもらいたいものがあるんだよ」

 洋ちゃんはずんずん歩き、振り返ろうともしない。

 よろけ、転びそうになりながらも、なんとか歩調を合わせ、洋ちゃんの横顔を見あげる。

 いつも笑顔で楽しそうな洋ちゃんが、今日はなんだかひどく険しい顔をしている。

 洋ちゃんがこんな顔をするということは……?

「洋ちゃん、まさか美樹ちゃんに何かあったの!?」

「いや、美樹は関係ない」

 ならよかった。

「香澄だ」

「香澄?」

 美樹ちゃんに何かあったわけではないのは喜ばしいことだけど、香澄に何かあったということ?

「香澄に何かあったの?」

「わからないから、一舞に見てほしいんだよ。俺一人じゃ判断できないから」

「見るって何を?」

 訊ねても洋ちゃんは返事をしない。

 何の説明もなしに呼び出して、何処につれてい行く気なのかも言わないで、香澄に何かあったのかどうかもはっきり言わないうえに、質問にも答えてくれないとは。

「洋ちゃんの行動の方が訳わかんないよっ。ちゃんと説明して!」

 あたしの腕をつかむ洋ちゃんの手を逆に強く引っ張った。

「わわっ!」

 倒れそうになった洋ちゃんを、慌てて後ろから支える。

「ごめん。強く引っ張りすぎた」

「その細い身体の何処にそんな力があるんだよ」

 やれやれと肩をすくめ、あたしの手を放すと洋ちゃんは再び歩き始める。

「洋ちゃん、」

「歩きながら説明する」



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