憧れの人A |
早朝の教室で、小テストのためのとても付け焼き刃的な復習作業。一舞ちゃんは真剣だ。 一舞 「う〜・・・ヤバい。これマジわかんない」 由紀 「これは…この…数式を使うと解けますよ」 一舞 「おぉ!なるほどね〜」 一舞ちゃんのノートにサラサラと数式をメモすると、赤い髪の隙間から覗く瞳がキラキラする。 (…なんだか幸せだなぁ) わたしってば本当に、一舞ちゃんに恋しているのかも…。 なんて、ひとり赤面していると、一舞ちゃんの制服のポケットから聞き慣れた着信音が響いた。 一舞 「お?」 ジャラジャラとストラップの音を響かせてポケットから取り出された携帯電話。開いて微笑む顔。いつもの光景。 由紀 「…かすみサン……でしたっけ?」 一舞 「うん」 ニコニコと《かすみサン》からのメールに返信する笑顔。 ふと…その笑顔のままわたしに目線を向ける一舞ちゃんに少々驚いて更に赤面。すると一舞ちゃんはさらに笑顔を深くして… 一舞 「ちょっと寄って」 そう言って 由紀 「きゃっ!?」 わたしの顔を引き寄せるものだから、湯気が立ちそうなくらいに顔が熱くなりました 。 一舞 「キメ顔よろしく」 由紀 「えっ?えっ?」 ピロリン♪ 一舞 「はい添付しま〜す」 由紀 「…」 なんですか?何故わたしの写メなんて… 一舞 「香澄に、由紀ちゃんのこと紹介したかったんだ。ビックリした?ごめんね」 由紀 「え・・・いえ」 そんなやりとりをしながら、一舞ちゃんがメールを送信すると、すぐに返信が来た様子。 一舞 「あははっ!ちょ!これ見て」 由紀 「え?…あ!」 一舞 「香澄のキメ顔ヤバい!ウケる!」 由紀 「…」 キメ顔というかコレは…変顔というのではないでしょうか…。 一舞ちゃんはお腹を抱えて笑っている。 …写メの中の《かすみサン》 思い切った変顔で収まっているその姿はまるで、お人形のような可愛らしさだった。 由紀 「可愛い人ですねぇ…」 ウッカリ見惚れるわたしを見て、一舞ちゃんはさらに声を上げて笑っていた。 |