憧れの人 |
いつもオドオドしてしまって、思っていることをきちんと言葉にできないわたしは、いつもいつもクラスの子からもその友達からも、とにかく色々な人からからかわれたりしていたのだけれど… あの日、一舞ちゃんが助けてくれて以来そういうことが無くなった。 無くなったというより、常に一舞ちゃんが守ってくれているからなのだけど…。 初めて出会った日からずいぶんと月日が経って、わたしも一舞ちゃんも受験を考える年。いつもはわたしを守ってくれている強い女の子だけれど、お勉強の時だけはわたしが一舞ちゃんに教えるという形をとることができる。 一舞ちゃんに何かしてあげられて嬉しい。 今日も朝食のお味噌汁の臭いを漂わせて、誰よりも早く教室に居る憧れの女の子…一年生の頃はわたしの方が背が高かったのに今は見上げるほど長身になって、短かった赤い髪は長く伸びてすごく綺麗なの。 たまに自分が、一舞ちゃんに恋してるんじゃないかって疑わしくなってしまうほど見惚れる瞬間が多くなった。 そんなドキドキを抑えながら、教室で居眠りしている一舞ちゃんに近づいて、そっと声をかける。 由紀 「一舞ちゃん……おはよう…ございます」 一舞 「……ん…おはよ」 寝ぼけ眼をこすりながら、わたしを見て微笑む顔がとても可愛い。 由紀 「あの…今日も…早起きですね」 一舞 「うん…ゆうべ少し遅かったから眠いけどね。てか由紀ちゃんはいつも朝早いのにちゃんとしてるよね…さすがお嬢様だ…」 うんうんと頷きながらわたしを見て感心しているみたい…でもそれはわたしが…じゃなくて、執事さんが起こしてくれるからで… …って説明したかったのだけれど 一舞 「あ!」 由紀 「ふぇっ!?」 突然一舞ちゃんが大きな声を出すものだから驚いてしまった…。 一舞 「由紀ちゃんどうしよう〜!」 由紀 「どっ…どうしたんですか?」 一舞 「今日って小テストあるよね?」 由紀 「え?も、もしかして忘れてたんですか?」 一舞 「う〜全然勉強してない〜!」 由紀 「……」 一舞 「由紀ちゃんお願い!今から弾丸で復習するから、やまはって!」 由紀 「…は…はい」 驚いたけど、こんな一舞ちゃんもやっぱり可愛いな…。 ・・・・・つづく |