男なんですけど(※TrinityB参照・透瑠side)
2014/08/07



『お人形みたいに可愛らしい』


 子供の頃の俺達は、そう言われる事が多かった。

 可愛らしいという表現に対してはそう嫌な気持ちにはならなかったが、問題はその後に続く言葉。


『まるで女の子みたい』


 生憎だが、俺は男の中の男として生きているつもりだから、もちろん女性的な感覚など持っていない。

 もちろんそれは翔も同じことで、その言葉に反発するかのように日に日に野生児化していたっけ。

 何の枷も無く超がつくほどの健康体ならば可能なことだっただろうけれど、ギャグかと思えるほどに虚弱で常に鎖に繋がれていた俺にはとても真似できたものじゃない。

 そもそもの原因はなんだろう・・・過保護な両親か。

 ただの心配だけでああなるものなのだろうか?よくわからないが、とにかく頑なに俺を檻から出そうとしないものだから、肌は日に焼けることも知らず、些細な天候の変化にさえ抵抗力の無い俺の体は、どんどん衰弱の一途を辿る。

 ピアノを弾くためだけに鍛えられた肉体に付属する細長い指。それを傷つけまいと気を配る日々。

 幼稚園や保育園の類には通ったことがない。集団生活は義務教育から。それもお堅い監視付きで。

 基本は保健室登校だから友達なんかできっこない。たまに教室に居ても近寄ってくるのは担任教師か翔くらいのものだった。

 この頃になるとさすがに、翔と俺の体格差はハッキリとし始めた。

 校内外を問わず走り回れる体力に恵まれた翔は、程よく筋肉が育ち始めた手足と、生まれつきの白人肌ではあったが血色も髪や肌の艶も良く、どこからどうみても健康優良児。

 日がな一日消毒液の匂いに包まれ屋内で過ごす俺は、もともとの食の細さも手伝って見るからに病弱な痩せた子供。


『儚いね・・・キミは』


 熱によって言う事の効かなくなった俺の身体に、その言葉をつぶやきながら触れてきたのは保健室に居たじいさんだった。

 虚ろな視界が捉えた悍ましい記憶。

 衣服の内側に滑り込むカサついた冷たい手の感触は、今でも忘れない。

 毎度毎度、寸でのところで逃げていた。どうやってその手を逃れていたのかなんて覚えていないけれど。


 逃げたところで辿り着くのはピアノの前しかなかったけど、じいさんが俺を追いかけてくることは無かった。

 結局はほとぼりが冷めたら、下校時間までの間はあの保健室に居なければならないから、追いかける必要なんかなかったんだろう。

 親にその事実を告げたところで家に縛り付けられるだけなのは明白だったから、あれ以上どうすることもできなかった。


 その光景を翔に目撃された時はさすがに死にたくなったな・・・。

 今でも忘れられない、黒歴史?




「まじか・・・」

透瑠
「まじだよ。笑えな〜い」


「っちゅーか、じいさん、元気やな・・・」

透瑠
「なにその感想。ウケるぅふふふ・・・でもその時に、翔が助けてくれたんだよね。跳び蹴りで」


「ほう、よかったやん」

透瑠
「それ以来、何かっていうと保健室に付き添ってくれたりしてさ」


「ええやつやん」

透瑠
「うん。まあ、あの時は本気でヤバかったからね。でもそれが逆に悔しいっていうかさぁ」


「なんで?」

透瑠
「なんで?じゃなくない?透瑠くんだって男なんですけど」


「あ、せやったな」

透瑠
「・・・」


「あ、ごめんごめん」

透瑠
「男の中の男なんですけど」


「うん。男らしいで」

透瑠
「・・・」


「俺より足長いしな」

透瑠
「・・・ふふん」


「・・・」

透瑠
「ところでちょっとお腹へった〜」


「ん?そういえば飯な。翔来るやろ思って待っとったけど、先に食う?」

透瑠
「うん。純くんが初めて作ったご飯食べる♪」


「あ〜あ、初めての手料理は彼女に食べさしたかってんけどなぁ」

透瑠
「仕方ないね。彼女いないし」笑


「やかましい」笑







(※オチは家出しましたw)



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随分前に書きかけのまま放置していたやつですw

たぶん、引っ越ししたての純くんの部屋で、ほぼ毎日集まってグダグダしてたんでしょうねw

そんなある日、何かのきっかけで話始めた透瑠くんの過去話です。

実はこの透瑠くんと翔くんの子供時代で一本、しかも透瑠くん目線で漫画を描こうとしていた時期があったんですけどね。

纏まらなくてやめた経緯がありますw

いつかパラレルでできたらいいなw

子供時代の透瑠くんも描きたいしw

はい。お粗末さまでしたΣ(ノ∀`*)ペチッ





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