小鹿ちゃん |
転校初日。新しい制服に身を包み、学校に向かう。 涼ちゃんと別れたショックはそれなりにあるから清々しい朝とは言えないけど、まぁまぁ天気は良い。 大きなリボンにふわふわスカート、女子校の可愛らしい制服はなんだか気恥ずかしくて落ち着かない。 若干そわそわしながら通学路を歩いていると、同じ制服を着た集団に出会した。 一舞 「…………?」 よく見ると、その集団の中心でふるふると震えている人影が目に留まる。 (いじめ?) …うん。どう見てもそんな雰囲気。 ともかく通り道でそんな光景を目にして、無視する気にもなれず声をかけることにした。 一舞 「何してるの?」 ??? 「…あ」 あたしの声に驚いて、女子の塊が一瞬散らばった。そして中心にいた女の子が、涙目になりながらあたしへと視線を向ける。…というか視線はずっと泳いでいて、あたしの姿からもすぐに目を逸らしてしまう。 オドオドと自信なさげに揺れる視線。ガクガクと全身を震わせてまるで生まれたての小鹿ちゃんみたい・・・。 一舞 「大丈夫?」 小鹿ちゃん 「・・・うっ」 手を差し出すと、本当に恐る恐るといった感じであたしの手を取る。 小鹿ちゃんが上手く立ち上がるのを見計らって手を放すと、途端に俯いてしまった…。 その間、小鹿ちゃんを取り囲んでいた女子の集団が耳障りな声をあたしに向かって投げてきていたけど、面倒なので無視。 一舞 「同じ制服だね。あたし今日からなんだけど、学校まで案内してくれないかなぁ」 小鹿ちゃん 「ぁ…は…ぃ」 小さな声で了解してくれたので、その手を取って学校に向かう足を進めようと踏み出した。 「待ちなさいよ!」 「私たちのお人形を連れて行かないでくれる?」 …女子集団の数人があたしと小鹿ちゃんの前に回り込んで行くてを阻む。 (…面倒くさいなぁ) 言葉使いはお上品でもやってる事はくだらない。お嬢様っていってもこんなもんかと、ワザとらしく大きなため息を吐き出し、仕方なく反撃に出ることにした。 一舞 「つーか…この子はどう見ても人間でしょ。人間を人形扱いする頭のおかしい人達とは関わりたくないので、消えてくださ〜い」 そう言って目の前の人だかりを掻き分けて進むと、背後から「まぁー!」とか「失礼ね!」とか変な文句が聞こえた。失礼なのはどっちなのか。それを教えてあげる気にもならない。 小鹿ちゃん 「ぁ…あの」 一舞 「あ、あたしは橘 一舞。よろしくね」 小鹿ちゃん 「ぁ…ゎ、わたしは…沢田…ゅ、由紀、です。ょ…よろしくお願いします」 あたしが微笑むと、彼女も頬を赤らめて微笑んでくれた。 |