Trinityの城(Trinity After Memory番外編)※
2013/06/26



透瑠
「思ってたより広いね〜」


「ホンマ広いやろ?どこに居ったらええんかわからんようなるで」


 此処は、母親の再婚を機に一人暮らしを始めた純の部屋。

 ピカピカに磨かれた床に寝そべって、両手足を伸ばしてバタつかせては喜んでいる透瑠を見下ろし、なんだか元気の無い顔の純。

 ベランダの窓を全開にして、そこから階下を見下ろす翔は、実はこっそり一服中なのだが、純はそれすら怒る元気が無い様子。

 当事者では無い透瑠がこんなにも浮かれているのに、いったいどうしたというのか。翔はその異変に気づくと、煙草を揉み消し自分の携帯灰皿に放り込んだ。部屋に入って窓を閉め、その足元に腰を下ろすと、純の顔を繁々と眺める。



「そらまあ、私立にホイホイ通わせてくれはるようなお義父さんやし。これくらい何ちゅうことも無いやろ。ホンマありがたいで」

透瑠
「さすが玉の輿〜。前は狭いアパートで純ママと川の字だったのにね〜」


「お前が言いだしたんだよな。独り暮らしするって。・・・どうせアレだろ。新婚生活には邪魔な一人息子を、体良く追い出せてラッキーってとこだろ」


「結局は自分のためってか?・・・そんなん言いなやえげつない」

透瑠
「身も蓋も無いよね〜」


 未成年の男子高校生が一人で暮らすには広すぎる、一般的な家族でも充分な程の部屋数と、キッチリ用意された家財道具。必要最小限の持ち物ですぐさま生活が始められるようになっているその場所。

 実は純は、なんとも言えない寂しさを感じていたのだ。

 とはいえそれが見透かされてしまっては居た堪れない。無意識に唇を噛むと、再び翔のマッタリとした声が窓際から聞こえてきた。



「良いんじゃねぇの?悪さし放題だぞ」

透瑠
「酒盛りとかできるよね〜」


「は?飲めへん奴が何言うてるん?てか酒盛りなんかさせへんぞ」


「母さん。そこをなんとか」


「アカン」

透瑠
「いいじゃん引っ越し祝いなんだから」


「アカンもんはアカンねん。つーか未成年で居る内は俺の目の前でそんなんさせへんからな」

透瑠
「厳しいよまま〜」


「やかましわ。誰がままじゃ」


「くっそ、ダメか」


「そらそやろ。てか生徒会長様がそもそもそんなんしたらアカン」


「なんだよ。今はプライベートだろ」


「プライベートでもアカンわ未成年。あと煙草もやぞ」


「・・・学校でも禁煙なのに?」


「当たり前やろが」


「・・・まあいいや。仕方ねぇ。っていうか、パジャマパーティーって何するんだ?」

透瑠
「可愛い響き。ふふ」


「単純にお泊り会や。パジャマで語り合うとかな」


「・・・何を語れと」


「さあ?楽しければええんちゃん」

透瑠
「三人で同じ布団?」


「それはさすがに・・・」


「つーか俺、パジャマなんてモン持ってないんだけど」


「は?」

透瑠
「そうだね。そういえば翔は普段、裸族だった」


「は?え?裸族?普段寝る時、裸なん?」


「そう。全裸」


「はぁ!?」

透瑠
「お布団めくったらフル○ンなの」


「おい」


「な?え?なんで?え?てか嘘やん?素っ裸で寝とって気持ちわる無いん?マジで?」


「馬鹿だな。素肌にシーツの感触ってすんげぇ気持ちいいんだぞ」

透瑠
「えっろ。ふはは」


「それにな?素肌だと敏感だからな?もしか誰かが布団に潜り込もうとしてもすぐ気づけるんだぞ」


「意味わからんわ!なんやそのシチュエーション!つーかアレか?ここでも素っ裸で居る気なんか?」


「そうなるよな」


「いややー!俺がいややー!やめたってー!」


「しょがねぇだろ。持ってねぇんだから。百歩譲ってもパンイチだ」


「それも嫌や・・・」

透瑠
「純くんのパジャマ貸してあげたらいいんじゃない?」


「・・・透瑠ならまだしも・・・着られると思う?このガタイが」

透瑠
「意外と?」


「いいよ。どうせ私服なんだし。パジャマに拘らなきゃこのままでイケんだろ」


「アカンよ。雰囲気出ぇへんもん」


「・・・どんな雰囲気だ」

透瑠
「それよりお風呂って使えるの?」


「使えるで。さっき確認したし」

透瑠
「じゃあ透瑠くん一番でもいい〜?もう汗流したい〜」


「おーええよ。タオルそこな」

透瑠
「わーい」


「不毛な話し合いは終わったのか。じゃあ俺は何か食えるモン用意するわ」


「おー助かるわー」


 何やら色々と問題はありそうだが、何とか始められそうな三人の宴。

 浴室から聞こえる水音と、キッチンから響いてくるまな板の音。寂しかった空間が一気に暖かい部屋へと変わった。

 いそいそと食卓を用意する純の顔からも寂しさは消えていて、嬉しそうな、幸せそうな笑顔へと変わっていたのだった。


















【数時間後】



「おい!なんで酒があんねん!」


「さっき買ってきたんだよ」


「アカン言うたのに!」


「寝酒だ寝酒」

透瑠
「・・・ん〜・・・」


「何が寝酒や!オッサンか!っちゅーかコレ透瑠が間違うて飲んだんちゃん!?伸びとるしもー!」


「心配すんなって、そのうち息吹き返すから」


「何を呑気な・・・!」

透瑠
「う〜・・・ぐるぐるしゅる〜・・・うへ・・・うへへへへへ」


「!!」


「な?」


「な?ちゃう!おかしい!なんかおかしい!」←ガクブル

透瑠
「あ〜・・・へへへ・・・純くんらぁ〜」ガバッ!!!


「うえ!?ちょ!や、やめろ!」


「あははは、襲われてるし」

透瑠
「綺麗な鎖骨れすねぇ・・・ふふふふ・・・あ。ホクロ発見」


「へ?」

透瑠
「ホクロも可愛い〜」パクッ!!


「きゃっ!?」Σビクッ!!!


「きゃ?」


「や、やめろて・・・マジ・・・やめ・・・」

透瑠
「んん〜」


「おい」

透瑠
「純くんかわいい〜・・・へへへ、もしかして〜、ここ弱点ん〜?ふふふふ」


「こら」

透瑠
「可愛いなぁ・・・・・・もっと可愛くしちゃおうかなぁ・・・ふふふふふ」


「や・・・」←涙目


「はいそこまでー!」ベリッ

透瑠
「わー!?」


「俺等の間にホモ発生させんじゃねぇよ。ノンケのくせに」


「(ホッ)」

透瑠
「だって純くん可愛いんだも〜ん・・・てか純くんなr」


「皆まで言わんとって!!!」泣



 コイツらとのパジャマパーティーなんて、開くんじゃなかった。

 純は心底そう思うのであった。


【終わるw】






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