生意気な(Trinity After Memory※参照)
2013/03/02




「で?どれが欲しいのよ」


 暖かな日差しが差し込む広い広い部室内。

 理事長の孫贔屓が如実に現れたその場所は、男子高生である彼らの憩いの場。

 煙草代わりの棒付き飴を舌で転がしながら、大きなソファーにドッカリと腰かけ何やら尋ねた学の隣には、この場所に居てはならない筈の人影がある。



「んー。おれはねー・・・コレが欲しいんだー」


 小さな体と図々しいまでに大きな態度の小学生。構ってもらえるのが嬉しいらしく、その表情はニコニコと上機嫌だ。

 いったい何処から潜り込んだのか、得意げにギター雑誌を広げて指さした名器。それを見た学は驚いて絶句した。



「ばーか。こんなんお前の小遣いで買えるかよ。ヴィンテージだぞ」


 学の代わりに口をはさんだ翔の言葉に、涼はあからさまにムッとした。



「えー?だってこれボロいじゃーん」


 すかさず反論するが、ボロいなんて言っていいのだろうか。



「ボロいんじゃなくてヴィンテージ。手入れされてんだよめちゃくちゃ」


「なあ・・・これ、そんな高いん?」


 楽器の知識にはまったく自信の無い純が恐る恐る尋ねると、翔は仕方ないと言った表情ではあるが、優しくそれに答えた。



「そうだな・・・俺が見た事あるやつは、確か200超えてた」


「にっ!!?ひゃく!!!?」


「!!!!」


「だろうなー・・・これじゃなくてもいいならもっと手頃なのもあんだけどな」


「復刻モデルでしょ?」


「ああ。でもちゃんと白いのもあんだろ?」


「ふっこくもでるって、これとちがうの?」


「うん」


「色もパーツも似せてるだけで結構違うぞ」


「そうなんだ・・・」


「いいじゃん。物は違ってもちゃんとしたブランドなんだから。音はそれなりに良い筈だぞ」


「うー・・・でもコレがいいなー・・・なんかあんま見た事ない色だし、ボロいのがなんかまたイイっつーか」


「ボロじゃなくてヴィンテージ。その使い込まれた感じとか、希少価値とか、作られた年代の質の良さが値段に反映されてんだって」


「欲しい気持ちは俺もわかるけどよ。お前、自分で買うっつーんならすんげー大変だぞ?ただでさえ数も少ねぇんだし。だいたい貯めんのに何年かかんだよ。その間に誰かが掻っ攫っちまうって」


「えー?・・・でも、今年のお年玉かき集めたら半分くらいはあるよ」


「お・・・」


「学さん。コイツの金銭感覚を普通に考えたらダメっすよ」


「・・・お年玉」


 お年玉が手に入った子供は高い買い物をしがちだが、なんだか涼は桁が違うようだ。

 まったくなんて生意気なんだ。そう思ったのは何も学だけではないだろう。

 兄の居ぬ間に忍び込んだお子様が、この部室を支配する日もそう遠くはない・・・が。結局のところ、この先の涼が手に入れられるのは数段格安の白いエレキ。

 活躍の場は、まだまだ先のことである。




***あとがき*****

Trinity After Memoryの更新よりかなり前に書いた話です。

涼ちゃんの所持楽器の中に、firebirdというGibson社のギターを設定してあるもので、ちょっといろいろ調べたら本家の値段が凄かったので書いてみましたw

いつか、firebirdをかき鳴らしてる涼ちゃんを描いてあげたいw






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