初心恋[うぶこい]フィルターB(LongNovel/CRIMSON Baby*番外編) |
蓮 「さて・・・出かけるか」 由紀 「!!!!!」ドキューン!! ドサッ・・・ 蓮 「?・・・は?」 わたしの脳内で、今まで聞いたことがない凄い音がしました。 勢い余ってか、そのまま後ろに倒れる形で身体が硬直してしまったようです。 どうしましょう・・・耳鳴りまでしてきました。 蓮 「おい、なんだ。どうした」 どうしたと聞かれても困ります。わたしのほうが驚いているのですから。 意識はハッキリしているのです。でも先ほどの音に驚いたからなのか、再び早鐘を打つ心臓のせいなのか、身体が言う事を聞いてくれません。 今、わたしの目の前で何が起きたのか。それを説明するのは簡単です。 単純に、先輩が眼鏡を外したのです。眼鏡を外しただけなのです。 ただそれだけなのに、胸を打ち抜かれた気分になったのは何故なのでしょうか。 蓮 「・・・まったく」 ギ・・・ 由紀 「ぅ・・・(はっ!)」 鈍い音をたててベッドが軋み、先輩がわたしを、真上から見下ろしました。 視界の片隅。自分の肩越しにある先輩の腕。この体制はとても・・・とても恥ずかしいです。 こうして見下ろされているわたしは、まるで・・・まるで・・・。 蓮 「どうした?」 由紀 「ぁ・・・ぁの」 眼鏡を外した状態で、見辛そうに目を細めるその表情が、今はとても近くて心臓が破裂しそうです。 蓮 「・・・なんだ。誘っているのか?」 由紀 「!」 さ、誘うだなんてそんな事わたしが出来る筈ないじゃないですか! そう言いたくても言えず、口をパクパク動かすことしかできません。 先輩はゆっくりわたしから離れると再び眼鏡を装着し、携帯電話と財布を無造作にポケットに放り込みました。 蓮 「俺を誘うなど・・・お前に限ってそれは無いな。というか、誘うならもっとやり方を考えた方がいい」 ごもっともです先輩。本よりわたしにそんな勇気はありません。 蓮 「起きろ。出かけるぞ」 由紀 「きゃっ!?」 腕を引かれ、頭を支えられた状態で無理矢理上体を起こされたわたしの口から、思わず悲鳴が上がりました。 蓮 「いちいち騒がしいな」 由紀 「あの・・・出かけるとは、何処へ、ですか?」 蓮 「・・・行けばわかる」 由紀 「・・・」 せっかく先輩のお部屋を訪れたというのに、すぐに外出だなんてなんだか勿体ない気がしますが。わたしを呼んだ当初の目的がそうなら仕方のない事ですが・・・。 途端になんだか寂しさを覚え、心臓の鼓動も先ほどまでの動揺も、一気に冷めてしまいました。 (いったい何処へ行くのでしょうか・・・?) 《まだつづく》 |