苦手なタイプ?(TrinityB番外編)
2012/10/09




「誰だゴルァ!!!」

???
『誰やちゃうんじゃボケー!ここに居るんはわかってんねやぞ!早よ開けさらせこの人攫いが!』


 まるで溜まったストレスを吐き出すかのように発せられたいつもの学の怒声。それに対し、インターホンの向こうから威勢よく返ってきた関西弁。そしてモニターに映る見知らぬ子供。

 真っ黄色に染められた金髪頭と艶の乏しい銀髪。そんな二人が今にも噛みつきそうな顔で小さなモニター越しに怒っている。



 ここは学が居候しているマンションの一室。

 オートロックの高級マンション。認証設定をクリアするか、住人からの許可がなければ入れない建物。

 一階のエントランスからこの部屋まではかなりの階数を昇ってこなければならないが、エレベーターを使えばなんてことは無い。

 時刻は真夜中。

 部屋の奥では、親友とブロンドの中学生が感動の再会中だ。

 先ほど保護したブロンド中学生の友達なのだろう二人を目の前にして、学のテンションは一気にクールダウン。無言でカギを開けてやった。


 数分後。部屋の前で待つ学の前に、二人はやってきた。



「あ。コイツや!」

透瑠
「近くで見ると更に凄いね」


「テメェらな。今何時だと・・・!」


 凄いとは何だ。そう思いながら、声の方へ顔をむけた学。まずは睨み合いになるかと思いきや、直接対峙したその雰囲気に瞬間的にひるんでしまった。




「・・・・・・」


「あのな。アンタが翔を連れて行ったん見てたんやで。早よ案内せんと警察に連絡すんで」

透瑠
「こういう人に警察とか言っても通じないんじゃないのかな」


「は?なんで?」

透瑠
「ん〜説明がめんどい」


「めんどい言うな」


「・・・お」

透瑠
「なぁに?お兄さん」


「!」


「ん?」

透瑠
「翔はどこ?」


「・・・な」


「な?」


「あー!もうメンドくせー!」


「うわっ」

透瑠
「真夜中にそんな大声だしたら近所迷惑だよ」


「ウッセー!テメェ!銀髪!近寄んな!」

透瑠
「は?」


「どないしたん?」


「禍々しい気を感じる!」


「・・・はぁ?」

透瑠
「・・・失礼だなぁ」


 いったい透瑠の何が禍々しいのか。どうも学はこのタイプが苦手な様子だ。

 とにかくなるべく透瑠が近くに来ないよう促して、純に対して状況の説明をする。

 学が噛み砕いて説明するも、二人はまったく信じていないようだが、学にしてみれば事実を話す以外にないのだから仕方ない。

 そんな、疑いの目を向けられる最中、学の携帯電話が着信を知らせた。

 慌てた様子で電話に出た学だったが、通話相手からの言葉は「解放していいぞ」のたった一言。

 どうにか了解の返事をして通話を切ると、傍らでそれを見つめている二人に向き直った。



「はぁ・・・もう連れて帰っていいぞ」


「お?」

透瑠
「なんだか案外あっさりだったね。喧嘩する気満々だったのに」


「マジでか!?」

透瑠
「うそ」


「嘘つくな」


「・・・」
(なんなんだコイツら・・・緊張感のねぇ・・・)



 学に届いたボスからの解放指令。

 彰と、ブロンド中学生の今後の無事を保障する知らせだ。

 漸く保護者役から解放されるのかと思うと、学本人もやれやれと気が抜けた。

 友達の無事をいち早く確認しようと、喧しく室内に入っていく二人を見遣って、先ほど感じた苦手意識を振り返る。



「・・・」
(なんか・・・どす黒いモンが出てんだよな。あの銀髪・・・)


 どす黒いモノ。それはいったい何をもって感じる感覚なのか。

 正体は不明だが、まるで獲物を前にした時の親友のようだと、身震いを抑えられない学だった。






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