翔くんの悩み(TrinityB【後編】参照)
2012/06/12




「そない独りが嫌なんやったら俺ん家にでも泊まりに来たらええやん」


 快晴の空の下。いつも通りの三人の姿が屋上にある。

 一通りのお説教を終えると、不意に投げかけられた親友からの提案。

 友達なんだから好きな時にに泊まりに来ればいい。そんな当たり前ともとれる提案だ。


透瑠
「あ、いいなぁ。俺も純の家にお泊りしたーい」


「来たい時に来たらええやん。2人暮らしの狭いアパートやけどな。お母ん喜ぶで〜」


「・・・」


「な?どこの誰ともわからん相手と怪しげな時間を過ごすよりも健全やん?」


「・・・そういえばお前ん家に行ったこと無いな」

透瑠
「すっごい狭いよ」


「せやな」

透瑠
「でも居心地良いの」


「やろ?」


「・・・でも、泊まりは無理だ」


「・・・なんでなん」

透瑠
「う・・・あー・・・でも、んー・・・」


「なに?」


「・・・少しの時間、邪魔するくらいなら問題なさそうだけどな」


「だからなんで?泊まったらええやんか。ほんでパジャマパーティーしようや」

透瑠
「ぷっ。なんでパジャマパーティー」


「なんか楽しそうやん」


「小学生か」


「似たようなもんやろ」

透瑠
「こんな汚れた小学生いないって」


「汚れてへんもん」


「まぁどっちでもいいけどさ。泊りも、パジャマパーティーも無理」


「だから何でや。つーかこの質問、何回目や」

透瑠
「んー、あのね純?」


「なに?」

透瑠
「翔には一個だけコンプレックスがあるんだよ」


「・・・なんや。こんなけ整って生まれてきといて、コンプレックスの一つくらいなんやっちゅーねん」

透瑠
「それが一番の問題だから、こういう話題になった時に困るんじゃん」


「・・・なんで自分のことみたいに言ってんだお前は」

透瑠
「翔の事で知らない事なんか無いもん」


「キモっ」


「・・・で?」


「・・・」


「なにがアカンくてウチに来られへんねや。言うてみぃ」


 純がそう言うや否や、翔は彼に抱きついた。



「はっ!?コラ!何すんねん!?」


「・・・匂うだろ?」


「へ・・・?」


「わかんねー?」


 言われてみれば・・・。翔の体から、仄かに漂う芳香。

 そういえば今まで特に気にしていなかったが、いつも一緒に居るとこんな匂いがしていたと、改めて純は気が付いた。


透瑠
「良〜い匂い?嫌〜な匂い?」


「え・・・・ええ匂い」

透瑠
「っだぁ〜めだぁ〜」


 純の感想を聞くや否や、透瑠は頭を抱えてしゃがみこみ、翔も元居たフェンスの傍に腰かけた。



「は?・・・なに?」

透瑠
「お泊りは無理だね」


「だろ?」


「なんや!何回も言わすな!」


「この匂いを良いと感じるヤツは、惚れたの何だの言ってきたり、そのうち急に襲いかかってきたりすんだよ」


「・・・・」

透瑠
「年齢性別問わずねー。だから純くん素質あんのかもー。あ、ちなみに透瑠ちゃんはどっちでも無いの。無感覚」 


「・・・なんや、まさか俺が翔に良からぬ感情を抱くとでも言いたいんか」

透瑠
「うん。てか純じゃなくて、純ママがその気になったらどうすんの?」


「わ、そらアカン」


「厄介な体臭だろ・・・しかもコレ、クソ親父からの遺伝らしいんだよな」


「え、親父さんも同じ匂いすんの?」


「俺は覚えてねーけど・・・ジジイが言ってた」

透瑠
「っていうかさぁ。ソレって俗に言う《フェロモン》ってやつなんじゃないの?」


「ふぇ・・・ふぇろもん?」

透瑠
「繁殖相手を引き寄せるためとか?動物とか虫とかそういうのあるって聞いたことあるよ?」


「俺は人間だ」

透瑠
「人間でも特異体質みたいのあんじゃん」


「どういうことだよソレ・・・別に繁殖する気ねーよ・・・」


「誰彼問わずにフェロモン振りまいてもなぁ・・・」

透瑠
「だから、なんかそのフェロモンを、自在にコントロールできるように修行とかしてみたらいいんじゃない?」


「は・・・?」


「・・・わっけわかんねー」


 いったいどんな修行方法があるというのか。

 とにかくこれでは何の問題も解決されない。

 透瑠の意味不明な提案に、翔も純も深い溜息を吐いた。








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