怪我の功名?(TrinityB番外編) |
学 「こら!テメー寝てろっつったろ変態!なに起きてきてんだよ!」 彰 「ん?」 昼の熱気を含んだ日差しが差し込むキッチン。そのカウンターにもたれた体制で冷蔵庫の中を物色していた彰は、背後からパコン!と頭を叩かれた。 緩い反応を見せつつ振り返ったそこには、今まさに彼の後頭部に打ち付けたであろう丸めた雑誌を、自分の肩にポンポンと当てながら睨んでいる親友の顔。 彰 「あー、だって喉が渇いたから何か飲もうと思って・・・」 学 「んなこたぁわかってんだよハゲ!この俺様が面倒見てやるっつってんだからまずは呼べバカヤロー!」 語尾に必ず悪態をつけるこの話し方にはもう慣れたもので、なんとも可愛らしい親友だと感じる思考はまさに変態そのものなのだろうか。当たらずとも遠からずである。 学 「とりあえずアレだ。姉ちゃんと弥生には話通ってるからな。今夜中には片付くんじゃねーか?」 彰 「・・・あぁ」 学 「だからおめーは安心して寝てろっつんだよっ!」 パコン!と音を立てて再び雑誌で叩かれる。大した打撃では無いのがまたくすぐったい。 ここは学が居候するマンションの一室。天涯孤独の親友が見つけた拠り所。 高層階なのだと一目でわかる窓からの景色。広い室内に漂う煌びやかな夜の匂い。その中に混じって点在する、場違いな子供の気配。そんな部屋に、彰も住まうことになったらしい。 用意されたのは、学との相部屋。さすがにベッドが二つ並ぶと狭く感じる空間だ。 学が働く夜の店に、血まみれの彰が逃げ込んだのはつい先日のこと。そしてその店には頼れる姐が居る事も分っていて、抱え込んでしまった面倒事の収拾を頼みたいというのが本来の目的だった。 彰本人にも強力なバックは付いていたが、そこから抜け出すために、そして、守りたいと思ってしまった気持ちを託すために、必要なのは更に大きな力だったのだ。 話は通っている。先ほどの親友の言葉は、これ以上無い安心を与えてくれた。 彰が気を失っていた数時間の間に奔走してくれていた学の姿を思い浮かべ口元が緩む。 彰 「ところでがっくん。喉乾いた」 学 「むっ?お、おーおーそうだったな。ちょっと待ってろな」 彰 「よろしくー」 彰がベッドに入ったのを確認し、飲み物を取りに向かおうと振り返った後姿。すかさずタッチした小ぶりな尻。 途端に丸めた雑誌で強打されたのは言うまでもない。 |