間違ってる(TrinityB予告編その2)
2012/01/27





「んー・・・ダリぃ」


 三年生のクラスは受験を目前に控えピリピリムード。そんな中での気怠いブロンド中学生は場違いそのものである。


    ガラッ!!



「お!来とるやん!」

透瑠
「今日は来るよそりゃあ」


 なんとも不安な情報を耳にしてしまった純は朝からそわそわ。翔が登校してくるのを心待ちにしていたのだ。

 おかげで透瑠も朝から引っ張りまわされてヘトヘトなのだが、そんな心配など知らない翔は、自分の席にダラリと座った状態で大きな欠伸をしていた。



「おい、翔。昨日お前何してたんや?」


「・・・はぁ?」


「なんやどっか泊まり込みしとったて聞いたで。どないやねん」


「・・・あぁ。透瑠か。お前マジ口軽いのな」

透瑠
「つーかもう少しオブラートに包むとか出来ないのかなーこの関西の人は」


「まあエエわ。ちょ、付き合えや」


「・・・やだ。眠い」


「はぁ!?朝やぞ!目ぇ覚ませや!」


「目は覚めてるけどさぁ・・・俺、寝不足で・・・・・・・zzzzz」


「寝んな!!!」


 居眠りするブロンド頭を一つ叩くと、その長身の体を持ち上げる。

 持ち上げられた方はと言えば、まったく協力の意思も見せず、そのまま再び眠ろうとしている。


透瑠
「純。無理だって。こうなった翔はどうあっても寝るから。たとえ爆弾が落ちてこようと寝るから」


「なーっ!起きろー!」


「zzzzz」


「寝たらアカーン!寝たら終わりやぞー!」

透瑠
「・・・遭難でもしてんの?」


「zzzz」


 もし遭難中であったなら、確実に翔の人生は終わっているだろう。とはいえ此処は平和な義務教育の場である。



「あー・・・もー。重いわもー・・・」

透瑠
「だろうねー」


「透瑠も運ぶん手伝って?」

透瑠
「やだよー。てかさぁ、俺に力仕事させようなんてよく考えられるねぇ」


「あーそーやったわ。お前《貧弱くん》やったな」

透瑠
「あ、それなんかムカー」


「んー・・・純ー・・・保健室まで運んでー・・・」


「なんでや!起きてんねやったら自分で行けやもー!」

透瑠
「わー、甘えてるー。きしょーい」


「冷たいなー純は・・・ご褒美あげるからさぁ、頼むー」


「!!」


 そう言って純に顔を近づける翔を寸でのところでかわすと、その長身を椅子に戻した。



「あっぶな・・・!!!」

透瑠
「あははははっ、デジャブかと思った」


「・・・お母さんには手なんか出しませんって。ふっ・・・あ、実花ー。丁度よかった、膝枕してー」


「・・・お、お母さん?」

透瑠
「純が、お母さんみたいだねってことじゃなーい?」


「・・・」

透瑠
「俺も同感。ふふふっ」


「せめてお父さんにしてくれや・・・性別間違っとるがな」


 通りすがりの女子に膝枕をしてもらいながら、翔はすやすやと眠りはじめた。

 親友からお母さん扱いをされてしまった純は、すごすごと教室を後にするのだった・・・。









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