泣く子をあやすには(LongNovel/Code*4【苦悩】参照)
2011/12/15




(どうする?・・・どうすれば泣き止む?)


 部活後の帰り道で、突然泣き出した後輩。

 人目から逃れるために滑り込んだビルの隙間。

 俺の影にすっぽりと隠れてしまう小さな肩が、未だ嗚咽に合わせて震えている。


 この際だから改めて言うが、俺は泣かれるのは苦手だ。

 特に、泣いて物事をどうにかしようとする奴なんかは嫌いだとさえ言えるレベルだ。必要なら蹴り飛ばすことだってできるし、恐怖で涙を止めてやったことなら何度もある。涙に同情する必要など無いとさえ思っている。

 そもそも相手が仲間となれば例外だが、それなりに原因くらい理解できなければ困るんだ。

 今、目の前で震えている小動物のような女が何故泣いているのかなんて、俺にはわからない。ただその雰囲気は、どうしようもなく傷ついている。という風にも受け取れる。

 だが、だとしたら、原因は何だ?

 俺に怒鳴られまいと、今まで必死に堪えていたことくらい分っていたつもりだ。なのにこんなにも簡単に涙を見せた理由はなんなんだ?


(・・・俺か?)


 しかしまったく心当たりが無いんだが・・・。

 以前のように怒鳴ったわけでもないし、言ってしまえば俺らしくもなく優しさを絞り出したくらいなのに、こんな目に遭うのはそもそもおかしいだろ。



「・・・由紀」

由紀
「・・・・」


「頼む。泣き止め」

由紀
「・・・・」


「このままでは帰れない」

由紀
「・・・・」


「・・・」


 俺の声は聞こえている筈なのに返事もしないとは・・・まったくどうしようも無いな。


(こんな時、洋や涼ならどうするだろう・・・?)


 困り果てた末に脳裏に浮かんだのは身近な優男。思わず鳥肌が立った。

 よりにもよってアイツらを手本にしようとするとは、自分が信じられない。


(しかし相手が・・・もし、一舞なら・・・)



「・・・」


 しまった。合宿の時の腹立たしさを思い出してしまったじゃないか。

 だが、そうだな・・・あの時の俺がもっと涙に耐性があったなら、あんなに悔しい気持ちにはならなかったはずだ。



「・・・・」

(・・・あぁ、そうか)



由紀
「!!」


「ジタバタするな。仕方がないから、泣き止むまではこうしててやる」

由紀
「・・・ご・・・めんなさい」


「・・・許さん」


 誰の何を手本にしようともうそんなことはどうでもいい。由紀が泣き止んでくれるなら何だってしてやろうじゃないか。

 自分の腕の中にその小さな体を包みながら、耳に届いた由紀の声に俺はようやく安堵した。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -