ある朝の…涼くんの悩み
2010/10/07







 赤い髪の小柄な女子、一舞が仲間になって数日。



「!!」


 朝、いつものように髪をセットしていたら、なんと、十円禿ができていることに気づいた。

 このストレスの原因はわかっている。

 蓮と一舞だ…。

 それは、あの出会いの日から始まった…

……………


………


……










「おい、そこの猿女」


 倉庫の扉の前で、俺や照と談笑していた一舞を指差して、蓮が喧嘩腰に声を掛ける。


一舞
「……は?」


 すると、思った以上に可愛らしい一舞の声が、鋭い響きを含んで返された。


一舞
「なに?喧嘩売ってんの?」


「ふっ…誰が貴様のようなチビに喧嘩なんか売るか」

一舞
「だったら何よ」


「今すぐ帰れ。目障りだ」

香澄
「ちょっ!何それ!」


「うるせー、お前も邪魔だ」


「おい、蓮」


「女などお断りだと。俺はそう言ったはずだ」

一舞
「意味わかんない」


「猿は山に帰れ。俺たちはお遊びでバンドをやっているわけじゃないんだからな」

一舞
「なにそれ?男尊女卑ですか先輩?」


「貴様のせいで質が落ちると言っている」

一舞
「やってもないうちから決めつけんなよ」


「ふっ、随分な自信だな」

一舞
「アンタみたいに頭が凝り固まった奴に、音の質なんて解るかっつーの」


「あ?猿が解ったようなこと言ってんじゃねーぞ」

一舞
「ウッセー独活の大木。ちょっとデカいだけのクセして調子乗んなハゲ」






……


………


……………


 と、こんな感じで言い合いが始まってしまった。

 先に仕掛けたのは蓮だったけど、まさか一舞があそこまで平気で言い返せるなんて…驚きだ。

 それから毎回、練習のたびに口論が繰り返され、掴み合いに発展。更に昨日は殴り合いにまでなってしまった…。


(信じらんねー…)


 さすがに蓮は本気で殴ってはいなかったみたいだけど、あの光景は壮絶だったな…。


 つーか一舞だ…あんな可愛らしい顔して、あの気の強さは反則だ…。


(あんな女子、見たことねーよ……せめて2人とも、もう少し歩み寄ってくれねーかな…)


 とにかく俺は、鏡の前で溜め息を漏らしながらも、十円禿を隠す作業に専念した。










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