ある朝の…涼くんの悩み |
赤い髪の小柄な女子、一舞が仲間になって数日。 涼 「!!」 朝、いつものように髪をセットしていたら、なんと、十円禿ができていることに気づいた。 このストレスの原因はわかっている。 蓮と一舞だ…。 それは、あの出会いの日から始まった… …………… ……… …… 蓮 「おい、そこの猿女」 倉庫の扉の前で、俺や照と談笑していた一舞を指差して、蓮が喧嘩腰に声を掛ける。 一舞 「……は?」 すると、思った以上に可愛らしい一舞の声が、鋭い響きを含んで返された。 一舞 「なに?喧嘩売ってんの?」 蓮 「ふっ…誰が貴様のようなチビに喧嘩なんか売るか」 一舞 「だったら何よ」 蓮 「今すぐ帰れ。目障りだ」 香澄 「ちょっ!何それ!」 蓮 「うるせー、お前も邪魔だ」 照 「おい、蓮」 蓮 「女などお断りだと。俺はそう言ったはずだ」 一舞 「意味わかんない」 蓮 「猿は山に帰れ。俺たちはお遊びでバンドをやっているわけじゃないんだからな」 一舞 「なにそれ?男尊女卑ですか先輩?」 蓮 「貴様のせいで質が落ちると言っている」 一舞 「やってもないうちから決めつけんなよ」 蓮 「ふっ、随分な自信だな」 一舞 「アンタみたいに頭が凝り固まった奴に、音の質なんて解るかっつーの」 蓮 「あ?猿が解ったようなこと言ってんじゃねーぞ」 一舞 「ウッセー独活の大木。ちょっとデカいだけのクセして調子乗んなハゲ」 …… ……… …………… と、こんな感じで言い合いが始まってしまった。 先に仕掛けたのは蓮だったけど、まさか一舞があそこまで平気で言い返せるなんて…驚きだ。 それから毎回、練習のたびに口論が繰り返され、掴み合いに発展。更に昨日は殴り合いにまでなってしまった…。 (信じらんねー…) さすがに蓮は本気で殴ってはいなかったみたいだけど、あの光景は壮絶だったな…。 つーか一舞だ…あんな可愛らしい顔して、あの気の強さは反則だ…。 (あんな女子、見たことねーよ……せめて2人とも、もう少し歩み寄ってくれねーかな…) とにかく俺は、鏡の前で溜め息を漏らしながらも、十円禿を隠す作業に専念した。 |