家まで送る、と言っても私は途中からバスに乗るので、送ってもらえるのはバス停までだ。案の定バス停までの道のりは無言、無言、無言となり、私はまた寿命が縮む思いで自分の爪先を見ながら歩いていた。男の子と一緒に帰るなんて初めてでどうしたらいいのか分からない。ていうかそもそもなんで影山くんはいきなり送ってくれるなんて言い出したんだろう。やっぱりまだ怪我のこと気にしてるのかな、ならもう治ったから大丈夫だよって、言わなきゃいけないのに。二人きりの時間を邪魔されたくなくて、なかなか口に出せなかった。


「……お前日向と仲良いのか?」

「えっ!?日向くんは中学が一緒で……仲良いっていうか、仲良くしてもらってると言いますか」

「ふーん」


やっと口を開いてくれたかと思ったらまた沈黙。私からも話題を振った方がいいのか……バレー部楽しい?となんとなく聞いてみると、分かりづらいけどどこか楽しそうな顔で部活の話をしてくれた。影山くんと日向くんって正反対なのに、バレーのことを話すときは同じ顔するんだ。珍しく饒舌な影山くんの横顔を見上げながらつい笑っていると、影山くんはハッと我に返ったのか照れくさそうにそっぽを向いた。暗闇でかろうじて見える耳が、ほんのり赤い。
見たことない影山くんの一面を見れて私は終始にこにこしてた。気まずかった沈黙もなんだか心地いいような、そう感じ始めたところで目の前にはバス停が。ああもうこの時間も終わってしまう。


「あ、私ここからバス乗るから。送ってくれてありがとう」

「おう、気をつけて帰れよ」

「うん……でももう捻挫も治っちゃったから、送ってくれなくても大丈夫だったのに」

「は?」

「え?」


私の言葉に首を傾げる影山くんに、そんな彼を見て首を傾げる私。傍から見たらずいぶん滑稽なんだろうなあとぼんやり思った。私が怪我してたから送ってくれたんじゃないの?


「怪我治ったにしても、暗い道に女一人はその、何かと危ないだろ……たぶん」

「うん?うん……そうですね?」

「日向がよく穂波さんのこと話してて、ちょっと話してみたかったし」

「!!そ、そっか、へへ」


嬉しくて反射的にありがとうと口に出した私は本当に満面の笑みだったと思う。それにつられたのか、影山くんの唇も柔く弧を描いていて。影山くんの笑顔!激レア!写真撮りたい!とか考えてたらバスが来てしまった。なんて空気読めないバスなの。
もっと見たいと思いつつも恥ずかしくて影山くんの顔も見れないままバスに乗り込むと、また明日、と向こうから言ってくれて。ちょっと大きめの声で私もまた明日!と軽く叫んだらまた笑われた。その笑顔は本当に反則だよ。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -