なんだかんだでしっかりとテーピングまでされてしまって、手際の良さはさすが運動部だなあと感心した。何度もお礼を言う私に、こないだプリント貸してもらったからな、と何でもないように呟く影山くん。それを聞いてやっと"どうして私にここまでしてくれるのか"という疑問が解けた。ていうか覚えてくれてたんだ、もう忘れられたかと思ってた。あの日プリントやるの忘れててよかったなあ。
影山くんはエナメルバックを背負い直して部活に向かうみたいだし、私も今度こそ帰らないと。せっかくの二人きりの空間をもったいなく感じながら、もう一度丁寧にお礼を言って影山くんとは別れた。短時間に色々あり過ぎて少し頭が混乱している。何より、別れ際に「お大事に、穂波さん」なんて今日一番大きな爆弾を投下していった影山くんを私はゆるさない。ぼっと音が付きそうなほど勢いよく赤くなった顔を見られてませんように。


▽▽▽


「あっ」

「あ、」


次の日、心の準備をする間もなく下駄箱で影山くんを見つけてしまい、彼を視界に入れるとつい声が出てしまった。いつもはもっと早い時間に教室にいるのに。今日は朝練休みなのかな。緊張で心臓をばくばく言わせながら「お、おはよう」と挨拶すれば若干戸惑ったように「はよっす」なんて運動部らしい挨拶が帰ってきた。内心ガッツポーズである。


「……足、どうだ。痛むか?」

「よ、よくなってきたと思う!あの、昨日は本当にありがとう」

「別に」


そう言ってふいと顔を顔をそらされてしまったけど、その言葉に冷たさは無くて。影山くんの綺麗な横顔を見ながら幸せだなあなんて考えた。漫画みたいに廊下の角で日向くんにぶつかったのは予想外だったけど、結果的にこうして影山くんと話せるなんて思ってもみなかったから。足はまだ痛むけど、あの事故がきっかけを作ってくれたことに感謝したい。
上履きを履き変えるタイミングが同じくらいだったので、一緒に教室行っても大丈夫かな!?と内心どぎまぎしつつ影山くんの一歩後ろを歩く。ちらりと盗み見た影山くんは眠そうに欠伸をしていてちょっと安心した。いつもと同じ廊下なのにまったく違って見えるのは、きっと影山くんのおかげだろう。今まで見てるだけだった人が隣を歩いてるんだもんなあ。嬉しすぎて隣でへらへら笑う私を影山くんは疑問符を浮かべながら見てたけど、顔がにやけるのを抑えられなかった。あー幸せ。



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