翌日。宣言通り歩ちゃんは沢山の少女漫画を持ってきたので、私は放課後漫画の消化に専念した。
ていうかこれ何巻まであるんだろう。ずらーっと机に並んだ漫画の数にこっそりため息をつく。ずっと読んでると目も疲れてくるし、一旦休憩を挟もうと漫画に栞を差し込んだ。一緒になって漫画を読んでいた歩ちゃんに声をかけてみたけど、集中していて聞こえてないらしかった。じっと真剣に読み進めている邪魔をしても悪いし、暇なので飲み物でも買いに行こうとそっと教室を出た。(一応歩ちゃんに一言断りを入れたけど多分聞こえてない。)


今はもうみんな部活に行っちゃってるから、廊下も広く感じられた。運動部の掛け声や吹奏楽部の演奏もBGMみたいに聞こえてきて、廊下を歩くのもなんだか楽しくなってくる。つられて適当な鼻歌を歌って歩きながら、一番近くの自販機へと到着した。どれにしよう、と紙パックのジュースたちを眺めて、ぱっと目についたぐんぐんヨーグル。あっこれ影山くんがいつも飲んでるやつだ!そう思った瞬間にはもうそのボタンを押していて、なんか私ストーカーくさいな。でも誰にも迷惑かけないストーカーだから許してください。
教室に戻る前にぐるりと遠回りして第二体育館の近くを通ると今日もバレー部は一生懸命練習していて、ついがんばれ、と独り言をこぼしてしまった。誰にも聞かれてなかったと思うけど、体育館でボールを追う影山くんの視線が少し、ほんの少しだけ、こっちを向いた気がした。


「歩ちゃんどうしよう影山くんと目合っちゃったかも!」

「え〜〜〜千依ちゃんの喜ぶレベルってそんなに低いの………」

「えっ、ひ、低いのかな……嬉しかったんだけど……」

「まあ千依ちゃんのそういうとこ初々しくて嫌いじゃないよ」


大興奮して走って教室に戻って報告してみたけど歩ちゃんの反応は薄かった。これで低いとなると私はどのくらい高望みすればいいんだろう……。影山くんがよく飲んでるジュース買えたのもちょっと嬉しかったんだけど、また微妙な反応をされそうなので言わないでおくことにする。初々しい、と言われるからには歩ちゃんは、というか世の女子高生たちは、もっと大人な恋愛経験を積んでいるのだな、と栞を挟んであった漫画のヒロインを見ながらしみじみ思った。



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