まちがえた




久しぶりにカレー作ったから寄ってけよ。
彼らしい簡潔なメッセージが届いて、家に帰るはずだった足を彼の家へと向けた。最近お互い仕事が忙しかったから、こうしてプライベートのお誘いが来るのは嬉しい。添付された写真には北斗さんと翔太くんも写っていて、相変わらず仲良しだなあと笑みがこぼれた。その輪の中に自分も入れてもらえるのがまた嬉しい。
ドアの前でインターホンを押せば、中で何やらバタバタと音がしたあと冬馬くんがちょっとぶっきらぼうな顔して出迎えてくれる。おう、よく来たなって。

「なんか久しぶりだね、カレー皆で一緒に食べるの」
「最近忙しくて簡単なもんばっか作ってたからな…あっおい翔太おかわり何回目だよ!」
「だって冬馬くんのカレーおいしいんだもん」

お皿に目一杯カレーを盛りながらのどかさんいらっしゃい、とさも自分の家に招いたみたいに翔太くんが歓迎してくれた。そのカレーが何杯目なのかは聞かないでおく。今日のカレーはスパイスが違うと解説してくれる冬馬くんの話を半分くらい流し聞きしながら、じゃれ合う三人に混じってカレーをおいしく頂きました。久しぶりに食べる冬馬くんのカレーはやっぱり美味しくて、おなかいっぱい食べてしまった。

「おっと、そろそろ次の仕事に行かないと」
「そっか北斗はまだ仕事か。片付けしておくから行ってこいよ」
「えー北斗くんもう帰っちゃうの?」
「はは、仕事はちゃんとこなさないとね。今日のカレーもおいしかったよ」

おなかいっぱいになって眠たそうにぐずる翔太くんを仕事ついでに送っていくからと、二人ともそのまま帰ってしまった。二人を見送って、片付けを手伝おうと思ったのに台所に関しては冬馬くんが譲ってくれないので急に一人で時間を持て余してしまう。適当に付けたテレビのチャンネルもたいして面白くないし、翔太くんじゃないけど、おなかいっぱいで眠たいなあ…。さすがに冬馬くんが片付けをしている間に部屋で一人寝るなんて、とは思いながらもそのまま眠気に任せて意識を手放してしまう。


▽▽▽


皿洗いをしてるうちに台所の汚れが気になって軽く大掃除みたいに綺麗にしてしまった。熱中しすぎてピカピカになったキッチンに満足して時計を見やると、あいつらと一緒に昼飯を食ってから随分時間が経っていた。北斗と翔太は帰したが、のどかも早めに帰してやった方がいいだろう。せっかくだし土産にカレー持たせてやるかと部屋を覗くと、待ちくたびれたのかベッドにもたれてうとうと微睡むのどかがいた。テレビも付けっぱなしで、無防備なやつだな……。とにかく起こさねえと、と声をかけて軽く肩を揺するが唸るだけで全く動じやしない。寝起きが悪いのは翔太だけにしてほしい。

「んんー……」
「おい起きろって。駅まで送ってやるから明るいうちに帰れよ」
「……おかあさんうるさい…」
「お、…………はあ!?」
「はえっ」

急に出した大声にびくりと震えてやっとのどかが目を覚ます。寝ぼけた様子のままじっと顔を見合わせて、やっと自分が何を口走ったのか認識したらしい。どんどん赤くなる顔を抑えて、必死に身振り手振りで否定しだした。

「ち、違うの!間違えたの!!」
「誰がお前のかーちゃんだよ」
「ね、寝ぼけてて…違うの怒んないで……」

いや怒ってねえけど。あたふたしながら言い訳し続けるのどかが面白くて口には出さずにしばらく眺めていたが、恥ずかしさやらなんやらでとうとう泣き出しそうになった顔が面白くてつい吹き出してしまった。

「!?わ、笑った…人が必死で謝ってるのに……」
「ふ、はは!いや必死なのが面白くてつい」
「もう冬馬くん嫌い……」
「お母さんじゃなくてか?」

からかってやればまた顔を真っ赤にしてばしばし背中を叩いてきた。泣いたり怒ったり忙しいやつだな。ついからかい過ぎたなとは思うが、その後もずっとしかめっ面で拗ねてた癖に帰り際にカレーを渡したら嬉しそうにニコニコしだしたので本当に単純なやつだなと思う。冬馬くんのカレー大好き、なんて言葉に一瞬ドキッとしたのは、今は言わないでおく。




診断メーカーのネタでした

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