Buon compleanno!




7月16日、今日は隊長の誕生日だ。
ブラッドの皆や極東の人たちと誕生日パーティみたいなことはやったけど、やっぱり個人としてお祝いしたくて隊長の部屋にお邪魔している。しかし誕生日とはいえ隊長は仕事がある訳で。仕事が終わるまで待っていてくれと言われ、そわそわと忠犬のように待っていても隊長は帰って来なかった。仕事が長引いてるのかな、何かあったのかな。そう思いつつも部屋の中をうろうろするしか出来ない。ムツミちゃんに教わって作ったケーキはクリームが溶けそうになっていた。


「……遅いなあ」


本棚を眺めたり、ソファーに寝そべってみたり、そんなことをしているうちに日付が変わりそうな時間になっていた。これは今日中におめでとうとは言えないかもしれない。待ち続けた疲れと誕生日パーティでの余韻に包まれながら、私は駄目だと思いながらもゆっくり目を閉じた。






何故今日に限ってこうもすべてが長引くのか。
妙に渋った対応をして会議を長引かせた上官の顔を思い出すと眉がぴくりと跳ねる。いつもならここまでイラつくこともないのに、必要となる資料を探しながら柄にもなく焦っている自分を珍しく思った。探しだした資料を小脇に抱えて早足で自室へと戻る。今日は俺の誕生日、それを祝いたいとなまえが部屋で待っているのだ。仕事だと伝えると少し寂しそうにして、待ってますと眉を下げたなまえを思い出して歩く速度を早めた。


「なまえすまない、遅くなってしまって……」

「………んん、」

「……寝ているのか」


急いで部屋に戻るとソファーの隅に身を寄せて眠るなまえと、汗をかいたジュースの瓶、クリームの溶けかけたケーキが目に入った。遅くなりすぎたな、と眠る彼女にそっと触れると身を捩ってむにゃむにゃと寝言を言っているようだった。その姿にくすりと笑みをもらして、とりあえずケーキやジュースは冷蔵庫にしまわなければと腰を浮かせる。ふと時計を見やればとっくに日付は変わってしまっていた。


「(7月17日、か)」


仕事をしているうちに今年も誕生日は終わってしまった。また今日もいつも通りの1日が始まる。ケーキやらを片付けて部屋に戻ると、なまえはいつの間にか目を覚ましたようだった。まだぼーっとしてはいるが、その目は開かれている。起こしてしまったか?と問いかけるとずいぶん緩やかな動きでこちらを振り返って、にっこり笑って口を開いた。寝ぼけた瞳はしっかりと俺を捉える。


「隊長、お誕生日、おめでとうございます」


そう言ったきりまた眠そうに目を閉じて、ゆらゆらと船を漕ぎはじめる。たまらず抱き締めると思いのほかしっかり腕を背中に回してきて、肩口ではまだむにゃむにゃと寝言を言っていた。寄りかかってくる彼女の重さを愛しく思いながら、あのケーキはまた二人で食べようと明日のことを思い描いた。



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