二等星の僕等に捧ぐ




瓦礫を背に身を潜めながら、どこかに人影はないかと視線を巡らせる。ブレンダンもカノンも、そう簡単にアラガミにやられるような奴ではないとは思うけど、足取りが掴めないのでは生死のどちらの確信も得られない。嫌な仕事だな、と思いつつも捜索に出るのはやめられなかった。アラガミの反応が無いことを確認して、少しだけ肩の力を抜く。はあ、と息をつけば神機も私と同調しているのか、ゆらゆらとコアの光を揺らめかせた。いつアラガミと遭遇するかも分からない場所で警戒し続けていては肩が凝る。ぱきぱきと嫌な音を立てる首筋を擦りながら、何の証拠も見つけられないまま合流地点へと足を進めた。



合流地点には私より先にカレルがたどり着いていた。一緒にミッションに来たシュンの姿はまだ見えない。大方またふらふらと辺りを探索しているのだろうけど、今のこの状況では姿が見えないだけで少し不安が胸に残った。捜索任務が続くとどうも気持ちが落ち込みがちでいけない。気持ちを切り替えるように首を振る私に気付いたカレルは、私が落ち込んだ様子なのを認めた上で常套句のように捜索の成果を問うた。



「何か見つかったか?」



「私の方は何も。人影もだけどアラガミもいないし……そっちは?」



「こっちもダメだな、シュンもまだ帰ってこねえし」



今日も外れか、そう言ってカレルは苛立ったように髪をかきあげた。がしがしと頭を掻く動きに合わせて、所々跳ねたくせっ毛が揺れる。いつになく焦った様子を見せるカレルに、彼も仲間を心配したりするんだなと失礼なことを考えた。口に出したつもりは無かったのだけど、私の驚いた表情から察したのか、チッと舌打ちをしてこちらを軽く睨んだ。俺が仲間を心配したらおかしいのか、とでも言うように。取り繕うように口を開いたけれど、気休めに過ぎないかもしれない。



「……カレルが仲間の捜索に積極的に出るのは意外だなと思って」



「お前は俺を何だと思ってんだよ……悪かったな、お前の思うような卑劣な奴じゃなくてよ」



「あーいや、そういうつもりじゃなくてさあ」



そういうつもりじゃないって、ここまで言っておいて一体全体どういうつもりなのか。考えてみたものの言い訳も見つからず、ごめんと素直に謝ると、カレルはふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。どうしよう、怒らせてしまった。失言については申し訳ないと思うけど、いつもどちらかといえば人を遠ざけていた彼も心配する気持ちは私と同じなんだ、と思うと少し心強い気がした。



「……私がいなくなった時もそうやって必死に探してよ、カレル」



「はぁ?お前みたいな迷子はお断りだな!つーかこの期に及んでお前まで捜索対象になるんじゃねーぞ」



「へいへい」



冗談混じりの会話のおかげで重苦しかった空気が幾分柔らかいものに変わり、内心安堵した。無意識に体を強張らせていた緊張も少しずつ解けていく。焦っていては見つかるものも見つからないだろうし、今はまだ、ゆっくりでいいんだ。深く息を吸って、吐いて、しっかり神機を握り直した。



「よっし、もう一周くらいしてこようかなー」



そう呟いてうんと伸びをする私に、おい、と珍しくカレルの方から声をかけてきた。なんですか、と振り返ると、彼もまた神機を担ぎ直して、背を向けたまま捨て台詞よろしく「お前が行方不明になったら骨くらいは拾ってやるよ」と呟いて探索に向かっていった。彼なりの励まし方なのか、ただの皮肉なのか……私も負けじと「楽しみにしてる!」と皮肉を返して歩を進めた。現状は何も進展していないかもしれないけど、さっきより格段に足取りは軽い。自分が迷子になる前に二人を見つけるべく、力強く一歩を踏み出した。落ち込んでる暇もないし、もうひと頑張りしてみますか。



title thorn



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -