「……うそ」
そんな、馬鹿な。
パチパチと何度もスイッチを確認するが、完全に仕事を終わらせたらしい電球は全く点く気配がない。
よりにもよって、深夜。
よりにもよって、ホラー小説を読んだ後。
よりにもよって、十年後らしいアジトで。
ジャンニーニさんを呼ぶ?
それとも風太さん?
ビアンキさん?
迫りくる生理現象に涙が浮かんできた。
こうなったら誰も来ないと賭けに出て、ドア全開でする?
中学生になってまで、トイレを!?
「やっ……」
「どうしたの?」
暗い廊下に一人しゃがみ込む私に声をかけてきてくれたのは、まさかの。
まさかの──
「ひば、りさっ……」
十年の時を経た和服の雲雀さん。
泣き声の私とドアの開いたトイレを見比べて、雲雀さんはスイッチを押した。
当然、点くはずのないそれを。
「まだ少し我慢出来る?」
流石、雲雀さん。
直ぐに現状を理解してくれてみたいだ。
恥ずかしいけれど嬉しい。
小さくこくりと頷くと、何を思ったのか雲雀さんは私を抱きあげた。