ズガンと嫌な音がして、身体に衝撃を受けた時点で、後悔する時間など私には許されなかった。
ホールには、綺麗に着飾った令嬢達の高音の悲鳴が響き、続いてダークスーツとサングラスをかけたガタイの良い大人が入り乱れる。
私もまた、背後に我等がボスを匿いながら、敵か味方かなど分かるはずもない人間を掻き分けていった。
マフィアのパーティーを襲撃するなんて、オーソドックス過ぎた。
マフィアやテロリストがするはずがない。
何処かの過激派か、はたまたただの馬鹿か。
“ツイてない”の、一言に尽きる。
マフィアも大概だが、世の中にはまだまだ理解に苦しむ人種がいたのだ。
身体が、熱い。
明らかに異様な反応を起こしている。
ダークスーツを着ていて良かったと、一瞬脳内で安心した。
多分、ジャケットを脱げば左脇腹辺りのシャツが真っ赤に染め上がっているだろう。
──今日のシャツ、下ろしたばかりなのに。
「ボス!ハヅキ!」