今ではもう、本物の月を愛でる事さえ困難になった。


それはボンゴレがマフィアとして最強である証なのかもしれない。
誉れるべき結果だろうが、それによって支払う代償もまた同様に大きかった。


現に、僕等は風紀財団の地下アジトからレプリカの月を眺めているんだから。


細部まで手入れが施されている庭は、僕好みに純和風。
落ち着いたその雰囲気を楽しむ事はほぼないけれど、無意識に視界に入れても害がないという事が大切なんだ。
邪魔にならない、という所が。


更にいえば此処は地下だけれど、外の世界に合わせて空を変化させる。
それも、特に意味を持つ訳ではないが日常生活をほぼこの地下で過ごす葉月にとっては重要なことらしい。
布団の干し具合が、なんて馬鹿なことを気にしていた時期もあったし。


そうして出来た不自然な箱庭の中で、縁側に座って葉月と月見なんて。
十年前の僕には到底想像もつかないだろうね。


僕だって、こうしていることが不思議なくらいなんだから。


「綺麗な月ですね」





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