突如、もう一人の男が話に加わってくると、驚いて一瞬固まった。
が、慌てて脳みそをフル回転させる。
「え?あ、はい。日本に」
「哲、沢田に荷物が増えたって連絡しなよ」
「わかりました」
「あ、の?」
「荷物はそれだけ?そこに置いて着いておいで」
「えっ!?」
驚愕した。
荷物を放置しろと?
男の意図が掴めずあたふたし始めた私に、先程から色々と教えてくれた哲、と呼ばれる電話中のリーゼント男がポンと肩を叩いて来て、ジェスチャーで彼の後に着いて行くよう教えてくれる。
どうやら荷物は彼が運んでくれるらしい。
「おいで」
腕を引っ張られてしまい、慌てて歩調を合わせて男に着いていく。
これではまるで、悪い人に攫われているようだ。
無言のまま引きずられて行くこと少し。
どうやら目的地は空港に設備されている駐車場の車だったよう。
黒のスモークがかかった車は、まるでヤクザが使う物みたいで少し笑ってしまった。
慣れた手つきでロックを解除すると、男はドアを開け、後部席に私を押し込め、自らも隣に座ってきた。
──助手席じゃなくて?