此処は素直に従うことが正解だということを良く理解しているから。


「塾、だったんです。直ぐ帰りますから」


ところが、そう素直に話せば、何が気に入らなかったのか。
眉間に皺を寄せて機嫌のあまり良くない表情が、更に悪化してしまった。


慌てて何とか話を反らそうと話題を考える。
が、考えれば考えるほど、雲雀さんの興味を引きそうな話題は恐ろしい内容になっていく。


例えば、不良の話とか、トンファーで咬み殺す時の感覚とか、風紀委員の仕事とか。
間違っても、好きなご飯の話や友達の事、面白エピソードの事など提案出来ない。


どうしようと、彼の視線から逃げるように空を見上げた。


「あ、凄い」


偶然だろうか。
そこには薄い雲をも透けさせて明るく満月が輝いていた。
丁度、雲雀さんの後ろで。


「あぁ、今夜は満月か」


雲雀さんはそのまま器用に後ろを振り向いた。
その姿に思わずドキリとする。


月明かりに照らされた雲雀さんの整った横顔と白い肌は、あまりに綺麗すぎたから。





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