思わず勢いよく立ち上がってしまった。
草壁君、びっくりしてるだろう。
ど、どうしよう。
なんてタイミング。
「すみません!失礼しましっ……え?」
慌てて応接室を出ようとした彼に手を伸ばす。
「え?」と私も驚いて自身の手の先を見た。
そこには草壁君の長ランを握る、私の、手。
「っ!?ご、ごめんなさっ」
更に赤くなる顔。
上手く回らない思考。
だけど、此処で手を離したら。
機会はもう、
「これ!く、草壁君に!!」
そう思ったら勝手に手がチョコレートを差し出していた。
私の、本命チョコ。
「自分にですか?」
顔を上げれば、ほんのり赤くなっている草壁君がいた。
旧制服の学ランの裾をたなびかせ、校門で制服チェックする時と同じ真っ直ぐな視線。
きっちりカッターまで留められた制服。
何時も真面目で紳士的で、信じる雲雀君しか映さない目に私を映した彼が。
目の前に。
こくりと素直に頷くと、草壁君はふわりと優しく笑って。
「ありがとうございます」
チョコレートを受けとった反対の手で私の頭を優しく撫でてくれた。
大きい、何もかも包み込んでしまいそうな手で。
そんな所も堪らなく魅力的だと、再認識した。
告白チョコレート
(何時まで僕の前で群れる気?)
(あ、雲雀君にもチョコあげるね。はい、私とうちのお母さんから)
(………)
「我等夢見人也。」様企画 「バレンタイン」参加作品