「あ、もう下校時刻だよね?私、トイレ寄ったらすぐ行くから昇降口で待ってて」


「あぁ、じゃあ下で」


だが上手いタイミングで話が切り上げられる。
草壁は軽く手を振って教室を後にした。


そう、まるで上手く出来すぎているように。














「……ねぇ。今の、わざと?」


またも二人きりになった教室に静かに響く、少し低めの雲雀の声。
シンッとした中に緊張が走る。


「当たり前ですよ」


だが答えは淡々と返された。
怖いくらいの笑顔のまま。


「草壁君を残したら、雲雀さん、咬み殺しちゃいますよね?」


雲雀の答えはYesだ。
下校時刻を破り、群れている副委員長を許すはずがない。


だから、あのタイミングで。
先に草壁を雲雀から遠ざけた。


多分、彼の一瞬の表情の変化を読み取って。


「草壁君はあげませんから」


唐突に何の脈絡もなく発っせられた言葉。
何を言い出すかと思えば。


「あんなの、欲しくなんかない」





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