どちらにしても、雲雀にとってはつまらない草食動物狩りに違いない。
どんな間抜けな草食動物か。
ニヤリと咬み殺す瞬間を想像して教室の扉を開けた。
「お疲……あれ、雲雀さん?」
が、そこから返って来たのはあまりにも間の抜けた返事と、ポカンとした何とも無防備な間抜け顔の女子。
雲雀は相手にばれないように、仕込みトンファーから手を引いた。
「……もう下校時刻だよ」
女子──葉月を見た瞬間、牙を抜かれたように戦闘意欲がなくなったから。
それは、女子を咬み殺しても楽しくない、というごく普通の意見と、校則違反なんてしそうにない印象の生徒がいたからだ。
「はい、知ってますよ。人を待っているんです」
ニコニコニコニコ。
沢田綱吉がいたら「何、この両極端図!怖っ!!」なんて突っ込みそうである。
が、生憎彼は此処にいない。
だから、誰も雲雀の不機嫌な表情と、葉月の笑顔の差に突っ込むこともない。
「ふぅん。ということは君以外にも下校時刻を乱す奴がいるわけだ」