無言のドライブを体験することどれくらいか。
とてもではないが時計に目も向けられず、緊迫した空気に限界を感じる直前。
車は森の中の不自然な門を通り抜けて、豪邸のロータリーでやっとその動きを止めた。


雲雀さんが車を降りるのを確認して、私達もやっとこの恐怖のドライブから脱出した。
した所で帰れるわけではないのだが。


今自身が何処にいるのかも分からない森の中。
目の前には別荘、というには不便極まりない豪邸が。
まるで館モノの殺人事件でも起きそうなそれは、重厚でいて少し恐怖を煽る。


「早くしなよ」


苛立ちを含んだ言葉に、京子とハルと顔を見合わせ、慌てて雲雀さんの後を追いかける。


見た目と大差ない巨大な玄関口とエントランスを抜け、長い長い、それこそ永遠に続くのではないかという廊下を歩いていると。
響くヒールの音と、いくつもの規則的に配置されたドアに、別荘というよりホテルのような感覚がした。


客室だと思われる部屋を完備している別荘。
本当に殺人事件でも起きそうで嫌になる。
確かそんな話が小説になかっただろうか?
奇妙な館で必ず起こる、奇妙な殺人事件の物語が。





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