「きょ、京子、ハル!お茶はまた今度でいいよ。私、何時でも空いてるし」
冷や汗をダラダラ流しながら話に割り込めば、二人も雲雀さんの機嫌に気付いたらしく慌てて「ごめんね」と告げる。
本当は、ラ・ナミモリーヌの期間限定ケーキを食べに行く予定だったが仕方ない。
期間はまだ始まったばかりだし、これ以上この男を待たせると何だかマズイ気がする。
渋々、といった風に、京子とハルが車に乗るのを手を振って見届け、自身も家路へと足を延ばそうとした。
「君、何処へ行くつもり?」
が、不意にグイと腕を掴まれバランスを崩しそうになる。
そのまま、何かを聞いたり悲鳴を上げる前に流れるように助手席に座らされた。
バタンと音を鳴らして閉じられたドア。
京子もハルも突然のことに呆然としている。
だが雲雀さんはさも当然のように運転席に座りシートベルトを締めると、黒の高級車を何処か知らない目的地へと走らせた。