「報酬は君から貰うよう書かれているし」


「は?」


──何だって?


思わず聞き捨てならない台詞が聞こえた。
報酬は私から?


「え、私にお金を払えと?」


「うん。ほら、此処」


男が指し示す資料の先を見ると、確かに報酬は私から、と記載されていた。
思わずその資料を奪って、何度も見返してしまう。
しかし、何度見てもインク記載のそれが変わることはない。


「嘘でしょ?私、手持ちなんてそんなにない」


今度は違う冷や汗が流れ始める。
通帳には少しなら貯金があるが、とてもではないがマフィアに支払うほどの金額ではない。


「じゃあ、僕は指示通り仕事に行くよ。別に彼じゃなくとも報酬が貰えるなら構わないからね」


「ちょ、ちょっと待ってください!私、そんなにお金持って──ッ」


慌てて彼のスーツの袖に縋り付く。
が、軽く避けられてしまい、ふわりと身体が宙に浮いた。


驚いて前を見れば、先程まで見下ろされていた切れ長の瞳に正面から射抜かれる。
ビクリと身体が大きく反応したが、彼の手に押さえられ、机の上に座らされていては動きようもなかった。





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