君は違うの?
そう聞いてきたヒバリに答えに窮した。
「私は匣リングは知っていても匣兵器は知らないから」
戸惑いは直接的に届いたらしい。
「それ、研究者として可笑しくない?」
ごくごくまっとうな疑問だった。
だが、真実私は匣兵器を見たことがない。
私の周りにあるものといえば、たくさんの鉱石と匣リング。
その炎価値を知る機械。
研究所には匣リングは作れても匣兵器を使える人材はいないから。
“死ぬ気の炎”そんな力を持っていたらそもそも研究者ではなくて、マフィアとして就職しているだろう。
ヒバリは何を考えたのか、ポケットを探ると、手に小さな箱を取り出した。
まさか、この箱が匣?
いわゆる匣兵器?
「そう、これが匣兵器。これに君達が作るリングから、」
見たことが充分にある指輪から紫色の炎が出る。
説明はいらない。
雲属性の炎だ。
それを匣の少し開いた場所に注入する。
と。
「わっ!」
紫色の炎を纏ったハリネズミが出てきた。
動物だ。
「これが匣兵器。匣アニマルとも言うけれど。僕のは、」
「可愛いハリネズミ」
私の手の平に擦り寄り、針が刺さらないように注意深く触ってくる。
こんな可愛い動物が兵器なのか。
この子が人の生死を左右するのか。
「珍しい。ロールが懐くとはね」
「ロール?」
「彼の名前だよ」
ヒバリに撫でられた匣兵器は、
とても人工物とは思えないほど穏やかに微笑んだ