前方に見慣れた顔と声を確認すると、ボスの安全を再度確認して、彼の後方へと移動する。
ロマーリオさんが見付かれば安心だ。
ボスの顔など見てはいないけれど、安堵しているに違いないから。


「……ッローネ!」


ふっと安心から抜けた身体がビクリと強張った。
大衆の悲鳴の中、ファミリーの名を呼ばれた気がした。
手に握り直す、黒く重い拳銃。


明らかにこちらを見た“誰か”を視界に捕らえると、金髪の王子様がロマーリオさんのダークスーツに紛れたのを確認して、足を蹴った。
ボスに、キャバッローネに害なす虫は早めに退治しなければ。


「……ッ、ハヅキ!?」


ボスの声が聞こえたけれど、振り向きはしない。
ロマーリオさんなら絶対に、絶対に私よりボスを優先して安全を確保してくれるから。


ジャケットの中から小型のナイフを取り出して刃を確認すると。
私のファミリーの名を不用意に呼んでおきながら、私に気付かない馬鹿な男の胸元に、正面から躊躇いなく突き立てた。
悲鳴を上げさせないように、ハンカチと手で口元を覆う。
倒れる間際に見た、恐怖と怒りと怨みに塗れた瞳の顔に、やはり見覚えはなかった。





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