そうして葉月の手を取ってみれば案の定冷たくなっていた。
“ほらね”とは口に出さないけれど、瞳を合わせれば、君は慌てて否定しようとする。
“彼女のペースに付き合ってられないんだよ”
もう一度、心の中で僕自身にそう言い聞かせて。
グイと少し力を入れて葉月を座敷へ、そして布団の敷かれたそこへと引きずり込む。
「あ、あの、片付けが……」
そこまできてやっと事態を飲み込んだのか、少し拒否反応を示しはじめた。
もうとっくに遅いのに。
「明日しなよ」
「でも、」
葉月を布団の上で抱き上げて、そこに寝かせて。
柔らかく、少し低めの君の好きな甘い声色で耳へと言葉を流し込む。
「風邪をひかれたら、迷惑」
そうして大人しくなった葉月を見ながら内心笑ってしまった。
君の従順さと。
そして、やっぱりこの現実を、十年前の僕からは想像出来ない、なんて自分で思ってしまったからね。作り物の月の下で(月を愛でるより君を愛でる)
「我等夢見人也。」様企画「お月見」参加作品