「ボスの安全のためだ。分かってるだろ?」


飄々と答える部下に、何も言えない。
そうだ。
オレはキャバッローネの、マフィアのボスなのだから。


クスッと横で可愛い声が漏れる。
オレの部下ときたら、二手も三手も先を読む優秀なヤツばかりだ。


ドサリと許可無くハヅキの膝に頭を置くと、
「屋敷に着いたら起こしてくれ」と、子供みたいな我が儘を言ってみる。


「わかりました」と肯定が聞こえたあたりで、オレは遠慮無く意識を遠くに置き去りにした。
ロマーリオとハヅキなら、無事に屋敷に着くだろうと決め付けて。


遠退く意識の中で、二人が失礼な会話をする。


「悪いな、ハヅキ」


「いえ。王子様のお迎えも立派な仕事ですから」


「ボスが、王子様か」


──おいおい、オレはキャバッローネのボスだぞ。
“王子様”じゃなくて“王様”だろ?


だが、そんな声が届くはずもなかった。





迎えにきたわよ王子様
(ボスのためなら一秒でも早く)

お題拝借:niche 様






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