そうしてお互い引き寄せられるように、軽い軽いキスをすれば。
恭弥さんは普段見せないような、甘い顔で私を見ていた。
ドキリ。
真っ直ぐなグレーがかった切れ長の瞳に引き寄せられる。
祝福の声も、音楽も、鐘の音もしない。
聞こえるのは、遠いさざ波の音と、風で擦れる木々の音だけ。
お互いの吐息でさえ聞こえそうな静寂。
そんな中で、まるで大切な儀式のように左手を持たれる。
ゆっくり、ゆっくり、時の流れが倍以下に感じるくらいのスローモーションで、するりと薬指に銀色の指輪が通された。
「草食動物避けには丁度良いだろう?」
シンプルなデザインに、小振りの宝石が付いた指輪。
婚約指輪。
「嬉しくて、死んじゃいそう」
「何言ってるの。君は僕の物なんだから勝手に死なれたら困る」
そう言った恭弥さんが、あまりにも可愛くて思わず笑いが込み上げた。