よっぽど奇妙な表情をしていたらしい。
雲雀さんはククッと声を漏らし、笑いを堪えるように手を口に当てていた。
身体は小刻みに震えていたけれど。
そうだ。
この人は多分、最初から全て知っていたのだろう。
どうしてかは分からないけれど。
「そう。でも、君が直々に出向く必要はないよ」
「え?」
ふいに立ち上がった雲雀さんが、ポンと私の頭を撫でる。
そうされる意味が分からなくて、目線を彼に合わせれば。
背筋がゾクリとするほど、綺麗に笑っていた。
「売られた喧嘩は買うよ」
そう、楽しそうに答えれば、今度は私にだけ聞こえるように、小さく耳元で囁く。
「僕のお気に入りを傷付けた罰でね」と。
気付いたときには、パタリと応接室のドアが閉まって、私は当分の間、思考回路が停止してしまっていた。