そして、ふわりと花の様に微笑んでソフト・ハットの上から頭を撫でると「またね、沢田君の弟君」と声をかけて、曲がり角のその先にある応接室へと足を進めた。
怖くはないが、好んで近付きたくもない、という、ちょっとした秘密を心に残して。
「良い女じゃねぇか、ヒバリ」
カツンと音を立てて、葉月の向かった応接室とは反対側の角から現れた少年。
「どういうつもりだい、赤ん坊」
一触即発の雰囲気も気にはならないのか、リボーンは雲雀を見上げるとニヤリと笑う。
雲雀が角にいることを初めから分かっていた言葉と会話に、彼もその眉間に皺を寄せた。
「お前が興味を持つ相手が気になってな」
──中々、目の付け所が良いな。
と言えば、雲雀はその瞳を葉月が歩いて行った方へと流す。
リボーンが冗談半分に自身をからかっているのにも腹が立つが、それよりも今は同じクラスになった少女の方が気になり。
「あれは僕の獲物だよ」
そう、ゾクリとするような色っぽさとハンターのように鋭い視線をリボーンに向ければ。
彼もまた、同族の獣を思わせる視線で返したのだった。