葉月が驚いて瞳をぱちくりさせると、何が面白いのか、彼はその幼さからは想像も出来ないほど、ニヒルに笑った。


「ヒバリが怖いのかって聞いてんだ」


「怖くはない、かな」


思わず男の子の質問に答えてしまう。
しかも、真面目に。


その言葉を発してから葉月は慌てて、彼の視線に合わせるようにしゃがみ込むと、人差し指を口元に当てて“静かに”というポーズを取った。
もう応接室が目と鼻の先にあることを思い出したから。


「どうしてだ?噂くらい聞いてるだろ」


だけれど男の子は大して気にもせず、そのままのトーンで話す。
それに困った顔をすると、せめて自身だけでもと極力小さな声で答えた。


「あのね、ぼく?噂だけで人を決め付けちゃ駄目だよ。確かに雲雀さんについてあんまり良い話を聞かないけど……」


男の子の黒の瞳にちゃんと合わせて、まるでお姉さんが弟にするように、ゆっくりと真剣な表情で伝える。


「話してもいない人のこと、勝手に悪口言うのはもっと駄目なんだからね」





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