『ハヅキ、暑い?』
『だ、いじょーぶっ』
熱くなる頬。
自分で考えて恥ずかしくなるなんて。
もう、寝てしまおう。
うん、夜も遅いし、明日の授業が眠くなってしまう。
きっと明日にはもとに戻るだろう。
鳥らしくなく、ころんと寝転がって、バスケットの網で視界から消えた雲雀さんの顔に安心した。
きっと直ぐに眠れるに違いない。
「葉月」
雲雀さんが呼んでいる。
「葉月、まだ寝てるの?」
高い身長に短い前髪、低い声。
見たことがない大人の男性だ。
だけれど私は彼が雲雀さんであると理解する。
優しく微笑んでいて、その長い指を私の髪を梳くように流して。
たまに大切そうに撫でるのだ。
ソファーに寝転がる“葉月”に対して。
それを“私”は上から眺めている。
知らない部屋。
見たことがないソファー。
だけど此処は私達の家なんだと直ぐにインプット出来た。
そんな私を雲雀さんの視線が捕らえて、ふっと笑った。
「おいで、もう大丈夫だから」
そう言われてゆっくりと雲雀さんの手に滑空する。
ああ、この黄色の手はヒバードの物だ。