ざばーっと流れていく泡。
雲雀さんに悪気があるわけではない。
分かってはいる。
分かってはいるが、私の脳みそはもういっぱいいっぱいだ。
「はい、おしまい。目、開けて?」
ガシガシとタオルで身体全体を拭かれていく。
本当は、動物みたいに身体を震わせて水を飛ばせば良いのだろうけれど、あいにく私は多分出来ない。
飛べないことを考えると、そういう動物的行動もきちんと練習しなければ出来ないだろう。
優しく毛を梳かされて、目頭を拭かれて。
言われた言葉にぱちりと目を開けた。
開けて、しまった。
「気持ち良かった?」
視界の全てに雲雀さんがいる。
先に洗っていた黒の髪の毛から水が滴っていて、顔にも汗なのかお湯なのか流れる水気。
ほんのり赤く染まる頬に、優しい笑顔を乗せて。
……少しでも動いたらまずいことになる。
もう、なんで目を開けてしまったんだと考えている余裕はない。
「さ、出ようか」
ざばんとお湯が鳴って、視界に映るのが雲雀さんの顔から身体になった瞬間。
意識が吹っ飛ぶような気がした。