ところが、何時までたっても痛みどころか衝撃も来ない。
恐る恐る目を開けると、


「お腹でも痛いのかい?」


と、不安げな様子でこちらを心配する雲雀さんがいた。


──どうして?


分からない。
雲雀さんが、分からない。


頭の中がぐしゃぐしゃになる。
何時もの雲雀さんは何処にいったのだろう。
何時もの、最強不良の風紀委員長は?


「ほら。これは君の分だから食べていいんだよ?」


差し出されたのは、美味しそうに全く見えない干したトウモロコシ。
ゴクリと唾を飲み込んで、恐る恐る翼を伸ばす。


絶対美味しくないのに。
珍味にも含まれないのに。
だけど、雲雀さんを不安にさせたくないから。


私はそれを翼で器用に握ると、意を決して口に含んだ。


が。


『……美味しくない』


当たり前だ。
パサパサした上に、味付けなんてされていないトウモロコシ。
とてもではないが、人間仕様ではないそれが美味しいはずがないのだから。


「もしかして、嫌いなの?」


どうやら激しく顔に出ていたらしい。
諦めてコクリと頷く。


「……困ったな」


そう辛そうに言葉を零す雲雀さんに、私も悲しくなった。





美味しくない
(どうしてこんなに)
(胸が痛いのだろう)




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