パソコンで打った時に間違えたのだろう。
フッと笑ったと思ったら「ピッ」と声が出てしまった。


「どうかした?」


──しまった。
集中していたであろう雲雀さんの邪魔をしてしまった。


私が悪いと分かりながらも、咬み殺される、とビクリと身体を震わせてしまう。
今の私は誤字脱字を伝えられるわけもないし、手伝う事も出来ない。
なのに、仕事の妨げになるなんて。
──最低だ。


けれど、何時まで経っても拳はおろかトンファーも飛んで来ない。
代わりに来たのは、つい三十分前にもそうしてくれた優しい手だった。


『え?』


「君にはつまらないよね」


そう言って、私の頭を優しく撫でる。
トクリと心臓が鳴った。


不思議だ。
こんな雲雀さんを見たことがなかった。
雲雀さんはもっと怖い人で、機嫌とか気分とか、自分のルールで勝手に怒ったり咬み殺したりする人だと思っていた。


だけどこうしていると、まるで正反対。
真面目で優しくて柔軟で頼りになって。
意外過ぎる。


私は雲雀さんの優しい手を擦り抜けて、先ほどの誤字の部分まで移動すると、嘴をそこに数回ぶつけた。
きっと分かってくれるから。




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