(跡部景吾・忍足侑士side)
「なぁ、跡部。自分、何であんな無駄な放送したんや?」
練習後の更衣室。
他の部員を先に帰らせて意図的に作った二人だけの空間。
忍足は椅子に腰掛けて、着替え途中の跡部を見上げる。
その瞳は綾を見るそれより、厳しい。
「外部に影響を与える危険性を回避するためだ」
合わさらない視線。
けれど、互いに意図は通じる。
そして互いに気付いているのだ。
未だ“気付いている人間”は三人しかいないことに。
いや、もしかすると榊も仲間かもしれないが。
「お前は何で藍場を庇うんだ?」
「楽しいから……かもな。どうせ現状を楽しむんなら、あの姫サンと遊びたいんや」
「解決にはならないぜ?」
そう言って忍足に振り向く跡部の視線に、彼は楽しそうに合わせた。
「“謎は全て解けた”に興味ない」
「ハッ。理解出来ねぇな」
制服のネクタイまできちんと結ぶ。
鞄を持ち部室を後にする跡部を見て、忍足は怪訝な顔をした。
「俺にはお前の行動が理解出来んわ」
部室のドアは、忍足を残して閉じた。