私の返しにたっぷりと時間をかける。
時折聞こえる呼吸のような呻きのような、なんとも表現しにくいそれは彼女の──木ノ下サンの心を表しているよう。


コクリと鳴った喉に、こちらも少し緊張した。


『……私、友達に嫌われているかもしれないの』


「かもしれない?」


『うん』


いやに自信なさ気に語尾が掠れる告白とは違い、その肯定の答えははっきりとしていて。
“あぁ”と思わず言葉が頭を過ぎった。


この子は解答を知っている。
そう、ただ信じたくないだけなのだ。


だから。


「はっきり虐められてるって言えば?」


『えっ!?』


「でなきゃ、死にたいなんて言わないでしょ?認めるのは辛いけれど、認めないと先に進めないよ」


それが今この距離で出来る最大の努力だ。
だけれど、木ノ下サンの答えはあまりに予想外で、甘ったるいモノで。


『……どうして笑わないの?』


「笑ってほしいの?さっきと矛盾してない?」


『皆、笑ったから。気のせいだって笑ったから。だから──』


「あー私さ、虐められたことがあんまりないから申し訳ないんだけど、木ノ下サンの気持ちは分かんないよ?でも、周りの気持ちや相手の気持ちも分かんない」



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