無言の私が無視をしていると勘違いしたのか、彼女達の声が更にヒステリックになっていく。


「無視してんじゃないわよ!この不細工が!!」


「やっちゃいましょ!!」


何が?
と考える前に嫌な音がした。
水が流れる音。


──うーん、コレってまさか、やっぱり。


「後悔しな!楓原綾!!」


言葉が発されると同時に、ドアの上からザバンという良い音をたてて、水が降ってきた。
ついでにバケツも。


「馬鹿な事するから悪いのよ!」


「そんなに制服が濡れたら授業に出られないわね」


「いい気味!」


ドアの向こう側から聞こえるは暫くすると聞こえなくなった。


私は溜息を長く吐き、バケツを肩に担ぐと、何の躊躇いもなくドアを蹴破る。
金具が飛ぶ、良い音がしたが気にもならない。


「……ったく」


弁償は後で榊太郎にでも任せよう。
蝶番が片方使えなくなっていたが、見て見ぬ振りをし、バケツを掃除道具入れに戻した。


ぽたりと髪から垂れる水。
手櫛で髪を掻き上げ、水浸しになってしまった基準服を見て、溜息をつくと。
諦めて私はその場を後にした。















教室に戻れば、授業の始まる少し前で。



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