私の席は転校生らしく、窓側の一番後ろ。
幸い机も椅子も外見は無事なようでなによりだ。


「はぁ」


溜息を漏らしつつ、席に座る。
昨日榊太郎から貰った教科書をロッカーから取り出し(こちらもまだ無事だった)、大人しく授業の準備をした。


春の暖かい朝の陽射しが、教室に降り注ぎ。
遠目から眺める教室は、いかにも作られたドラマのように綺麗で理想的である。


しかし。


私はこの理想的な教室に笑いしか込み上がらない。
どんなにドラマチックなシーンでも、そこを渦巻く歪んだ空気は消せないものだ。


ふと脳裏に思い起こす。
言われてみれば此処は私からしたらドラマと同じで、まさに“創られた”シーンであり、世界であった。
“テニスの王子様”という漫画の中にあるワンシーン。


今更ながら漫画の中に居る自覚が芽生えてくる。
“此処”にいる私からしたら全て三次元で現実の出来事に見えるが、実際は白と黒の紙の上に印刷されている、インクの世界の出来事なのだ。



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