大人になるにつれて。
それが良いか悪いかは別にしても。
ところが彼女は溜息をつくと、その笑顔を曇らせた。
「でも、急によそよそしくなって……。私、何か嫌われるような事をしたのかって考えたんだけど、理由を聞いても、ただ謝るだけだから」
「……そう。藍場サンは何時も岩浪サンだけに指示していたの?」
「そうだよ」と消えそうな声が響いた。
悲しみを含む、それが。
こちらが一通り仕事を終えた頃、タイミングを計ったかのように二人が帰ってきた。
ご機嫌の良い藍場サンと、暗く倒れそうな岩浪サン。
「あぁ、仕事終わったんだ。ご苦労様」
「そちらこそ仕事は終わったのかしら?部外の生徒の声で、全く状況が読めなかったのだけれど」
藍場サンは私の目の前に立つと、腕を組んで、挑発的な目をした。
「安心してよ。今からアンタを地獄に落としてあげるから。私の言うことを大人しく聞いていればよかったのに、全く馬鹿な事をしたわね」
袖を捲り、手を擦る。
「私はそんなに簡単に地獄に落ちたりはしないわ。アナタこそ、自分でしたことで地獄を見ないようにね?」