相変わらず不安そうなその態度に、思わず溜息を付きそうになったが寸前で堪え、出来うる限りの笑顔で答えた。
「えぇ、本物よ。私は楓原綾。事情があって、確かに外見は中学生くらいに後退しているけれど、正真正銘、大学生よ」
お喋りをしながらも、しっかりと手を動かしているのは長年の癖なのであろう。
スピードは全く落ちない。
「嬉しい!本当に友達になれるなんて。起きてから気付いたんだけれど、夢の中での私は本当に我が儘を言っていたって、今でも反省しているんです。あの時は本当にごめんなさい」
「別に気にしてないわ。こっちこそ、冷たく当たって悪かったわね」
そう付け加えれば、木ノ下サンは緊張が解れたのか少しだけ目が潤んでいた。
彼女は私が此処に来る間、どれほどの辛さを我慢していたのだろう。
私と出会う前を含めれば、相当な時を過ごしたのか。
──だが。
「聞きたいのだけれど、岩浪サンはどういう子なの?」
「春花は幼稚園から一緒の親友なんだ!」
木ノ下サンのぱっと花が咲いたような笑顔に思わず目を惹かれた。
純粋なそれは、いつか時を過ごす内にどす黒くなっていく。